厚労省の「平成28年国民生活基礎調査」によると、日本人女性の22人に1人は便秘だといわれる。多くの女性を悩ます便秘だが、実は猫も便秘になりやすく、放置すると取り返しのつかないことになるのだという。ここでは猫の便秘について紹介する。
2017年に刊行された『慢性便秘症診療ガイドライン』によると、便秘とは、「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されている。つまり毎日排便があっても、腹痛や残便感があれば“便秘”であり、反対に毎日出なくても、腹痛や残便感がなければ問題はないということだ。
しかしこれはあくまで人間の場合であり、猫の“便秘”はどのような状態を指すのか。
「動物にとっておしっこやうんちは生理現象であり、排便は毎日行われるのが自然のことです。猫の場合、丸1日出なければ“便秘”を疑った方がいいでしょう」と、JVCC二次動物医療センター目黒病院センター長の佐藤貴紀さんは言う。
そのほかにも、トイレに何度も行き、排便のポーズをとるものの出ない、うんちが出ても量が極端に少ない、ウサギのうんちのようなコロコロとした小さなものしか出ない場合も便秘の可能性が高いという。
では次に、猫が便秘になる原因を見ていこう。
猫が便秘になる原因は、主に以下の6つがあるという。
【1】うんちの通り道である腸に、異物(おもちゃやひもなど)や腫瘍があり、うんちが出にくくなっている。
【2】トイレが汚れている、運動不足、環境の変化など、ストレスを感じる環境にいる。
【3】椎間板ヘルニアなどの脊椎疾患の影響で腸の神経や筋肉の働きが鈍くなっている。
【4】水分不足によりうんちが硬くなっている。
【5】ホルモン疾患、高カルシウム血症、低カリウム血症、腎不全などの病気の影響。
【6】利尿剤や抗ヒスタミン剤など薬による副作用。
「便秘になる理由は1つだけでなく、複合的な要因により起こります。便秘を放っておくと、嘔吐や食欲不振だけでなく、たまったうんちで腸が伸びてしまう“巨大結腸症”という病気を招く恐れもあります。そうなると、内科的な治療での改善は難しく、手術が必要となります。たかが便秘と侮らず、疑いがある場合は早期に動物病院を受診してください」(佐藤さん)
もし愛猫が便秘気味かなと思ったら、まずはキャットフードに水や湯を混ぜるなどして、自然と水分摂取量が増えるよう工夫するのがおすすめだという。
さらに、日頃から適度な運動をさせ、ストレスのない環境作りを心掛けたり、便秘解消のマッサージをしてあげるのも効果的だ。マッサージは、仰向けに猫を寝かせて、お腹を「の」の字にやさしくマッサージする。ただし、お腹を触られるのを嫌がる猫もいるので、様子を見ながら行うこと。
飼い主にとって、排泄物は愛猫の健康状態を把握できるバロメーターだ。便秘を見逃さないためにも、回数や色・形だけでなく、苦しそうかどうかなど排泄時の様子もチェックしておこう。
※女性セブン2019年10月17日号