東京・銀座の老舗映画館『丸の内TOEI』前。白い車両のスモークガラスが開くと、中からサングラス姿の男性が顔を出した。取り囲んだファンに手を振っていたのは、俳優・綾野剛(37)。9月26日、映画『閉鎖病棟-それぞれの朝-』(11月1日公開、平山秀幸監督)の完成披露舞台挨拶を終え、劇場を後にする際の出来事だった。
クールでダークな役どころが多いイメージからは想像しにくいが、ビジュアルだけでなく、性格も“イケメン”なことで知られる綾野。それを裏付けるように、イベントでは、映画で主演をつとめる落語家の笑福亭鶴瓶(67)が、撮影時の綾野の気遣いぶりを称賛する一幕があった。
「(撮影に)臨む姿勢がぜんぜん違う。性格も細かい。おばちゃんみたいな性格やった。『これ食べて』とかね。お母ちゃんと一緒にいてるみたい」
それに対し綾野は「鶴瓶さんの前では、みんな気を遣うからですよ」と笑顔で応じていた。
実は綾野と鶴瓶、以前から大の仲良しでもあった。2008年の映画『奈緒子』での初共演以来、30才という年の差も関係なく、親睦を深めてきたという。演技だけでなく、バラエティー番組での共演歴もある2人。綾野は「お付き合いも長くさせてもらっていて、バラエティー番組でも、プライベートでもよくしていただいているんです」と、鶴瓶との意外な関係を明かした。一方の鶴瓶も、綾野の人間性を「人を偏見なく見られる人」と評し、「ずっとそのままでいて欲しい」とも語っている。
映画は山本周五郎賞を受賞し、累計85万部を超えるベストセラー小説の映画化だ。病院の精神科を舞台に、死刑執行に失敗したことで、生きながらえることになった梶木秀丸(鶴瓶)、幻聴に悩まされ続けるチュウさん(綾野)らが、世間や家族との距離を感じながらも、心を通わせていく物語。イベント後にファンへの真摯な対応を見せた綾野は、“優しさ”がテーマの作品にぴったりの存在だったようだ。