パソコンもスマホも持たず、インターネットとは無縁の生活を送っている井上章一氏(64=国際日本文化研究センター教授)。近頃はそのことで「生きづらさ」を感じることが増えているという。
「いまの世の中は『年寄りでも、ネットを使わないなんてあり得ない』というのが前提になっています。
ホテルに泊まるときは、フロントのスタッフから、Wi-Fiっていうの? あれのやり方を毎回説明されます。『もういらん!』とは思いますが、いちいち言うのも面倒なので、一応最初から最後まで全部聞きますけどね」
宿泊先のホテルだけでなく、職場でも同じような「面倒」が繰り返されているそうだ。
「近年、全国の大学や研究機関では、外部からパソコンに侵入してくるハッキングが大問題になっているらしく、私が所属する国際日本文化研究センターもしばしば攻撃を受けているそうです。そのため各研究機関ではハッキング対策の講習会が行なわれるようになりました。問題なのは、その講習会が『全員参加』なんですよ」
パソコンもスマホも使わない井上氏がハッキング被害に遭う可能性はゼロ。それでも講習会への参加は必ず求められるという。
「僕が出席することに何の意味があるんや、と思いますね。実際、パソコンやスマホがなくても、いまのところは不便なく暮らせていますからね。欲しいとか、買わなきゃと思うこともありません」
※週刊ポスト2019年10月11日号