薬を飲むことで健康になれる──そんな“常識”をただ真に受けていると大きな落とし穴が待っていることがある。2017年の厚労省調査で220万人の患者数がいると推計される「脂質異常症」。心筋梗塞などにつながるとされるこの疾患の治療薬にも直視すべきデータがある。
体内でコレステロールを生成する酵素の働きを抑える「スタチン」と呼ばれるタイプの薬がよく処方されるが、服用により死亡率が上昇するというのだ。医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が解説する。
「2017年、アメリカの医学誌『JAMA Internal Medicine』に掲載された約2800人を調査対象にした論文で、スタチン系薬剤を使用した人は、生活指導だけを受けた人に比べて死亡率が18%高く、75歳以上では34%も高くなったと報告されています。
この論文によれば、スタチンを使うとコレステロール値は下がるものの、心臓病リスクは減らず、死亡率が高くなるというが、詳しい原因は解明されておらず、現在も研究が進められています」
秋津医院院長の秋津壽男医師がこう話す。
「スタチンはコレステロール値をよく下げる薬ですが、効きすぎることによるリスクもあることを知っておく必要があります。コレステロールは過剰だと動脈硬化を引き起こしますが、細胞壁や血管壁などを作る材料であり、不足すると血管が破れやすくなって脳出血のリスクが高まります。
高齢になると代謝が落ちて薬が効きすぎることが多くなるため、75歳以上の高齢者には処方をやめて別の薬に切り替えることがあります。ただし、患者が勝手に薬をやめたり減らしたりする判断をしてはいけない。医師と相談しながら薬の量や種類を慎重に検討すべきです」
※週刊ポスト2019年10月18・25日号