スポーツ

ラグビー代表、海外にルーツを持つ選手達と一体になるまで

トンプソンルーク(196cm)と田中史朗(166cm)の身長差は30cm(写真/アフロ)

 試合前の整列。スタジアムに「君が代」が流れると、桜のジャージの外国人選手たちが斉唱を始めた。目に涙を溜める選手もいる。日本を背負って戦う責任感と武者震い──。彼らはなぜラグビー日本代表を選んだのか。日の丸の勝利のために戦うのか。ノンフィクションライターの山川徹氏が、彼らの想いと足跡を追った。

 * * *
 ラグビー日本代表のチームワークを象徴するシーンだった。日本代表12番の中村亮土(28才)が、アイルランド10番の突進を突き刺さるような低いタックルで食い止める。次の瞬間、日本代表4番のトンプソンルーク(38才)が、ボールを奪おうと高めのタックルを浴びせ、相手を仰向けに倒す──。

 9月28日、ラグビーワールドカップ(以下、W杯)の日本対アイルランドの一戦。日本中を沸かせたジャイアントキリング(大番狂わせ)の一因が、繰り返されたダブルタックルだった。アイルランド代表に比べ、小柄な日本代表は1対1では当たり負けしてしまう。そこで必ず2人でタックルに行く戦術をとっていたのである。

 それが見事に決まったのが冒頭のプレーだ。6対12のアイルランドのリードで迎えた前半34分。中村とトンプソンのダブルタックルにより、日本はゲームの流れを引き寄せる。その後のスクラムで奪い取ったペナルティーと、直後のペナルティーゴールを糸口に、日本は反撃に転じた。

 前半を9対12で折り返した日本は、後半18分に逆転のトライ。さらに4本目となるペナルティーゴールで19対12と突き放し、勝利を奪った。世界ランキング2位の優勝候補から奪った大金星は、日本だけではなく、世界中のファンを驚かせた。さらに10月5日のサモア戦も38対19で勝利。日本としてはW杯ではじめて3連勝を挙げて、史上初のベスト8進出に弾みをつけた。

 中村とトンプソンのダブルタックル。そして、韓国、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、そして日本にルーツを持つ8人の選手が一塊になって、アイルランドを押し込んだスクラム。何よりも、そうした多様な背景を持つ選手たちが、ひとつになって果敢に戦う日本代表のプレーが、国境を超えてファンの心を掴んだのである。

◆合宿中に「君が代」の練習を続けてきた

 キャプテンとして代表を率いるのが、リーチマイケル(31才)である。ニュージーランド出身の彼は、日本代表になった動機をこう振り返る。

関連記事

トピックス

格闘技イベント『BreakingDown』の会場に行った川口さん(本人Xより)
《“男性の体臭発言”で炎上》川口ゆりを司会に…イベント主催者が明かす「起用の経緯」と「参加者からの反応」
NEWSポストセブン
宮田笙子(時事通信フォト)
《喫煙・飲酒でパリ五輪辞退》体操女子の宮田笙子選手、400年の歴史誇る寺院の母親が明かした現在「まだ実家にも帰ってきていません」
NEWSポストセブン
12月中旬に小倉智昭さんの葬儀が営まれた
《本は数万冊、CDやDVDは約2万枚》小倉智昭さん、叶わなかった妻の願い「コレクションを眺めながらお別れの時間を」
女性セブン
M-1での復帰は見送りとなった松本(時事通信フォト)
《ダウンタウン松本人志の現在》“幼なじみ”と模索する地上波復帰…浮上した意外な「番組」
NEWSポストセブン
内田容疑者は北海道留萌市の高校生・村山月さん(17)を殺害した疑いがもたれている
【旭川女子高生殺害】駅裏で売春のために立っていた少女たちは今…内田梨瑚被告(22)の逮捕で変わった繁華街「サンロク街」の現在、警察が本腰入れるもキッズたちはSNS使って“買う男”探し
NEWSポストセブン
送検時の平原容疑者(左、共同通信)。右は高校時代の平原容疑者
「被害者と同じ歳くらいの娘がいたと聞いている」平原政徳容疑者に「数か月前に離婚した」証言も…謎が深まる“犯行動機” 【北九州・女子中学生刺殺】
NEWSポストセブン
私的な外出が増加している紀子さま(2023年、ベトナム・ハノイ。写真/時事通信フォト)
《悠仁さま、推薦で筑波大学に合格》大学決定の過程で“蚊帳の外”だった紀子さまに起きた変化、私的な外出が増加
女性セブン
「結婚式はホテルオークラ。列席者には政財界の大物からヤクザまでいた」(力道山の妻だった田中敬子さん)
【生誕100周年・力道山】「力道山未亡人」が明かす英雄の素顔 「最終的には政治家になって朝鮮統一を成し遂げようと考えていました」
週刊ポスト
無罪判決となった須藤早貴被告
《紀州のドンファン・13億円の遺産》「私に渡したいって…」元妻・須藤早貴被告が無罪判決で勝ち取る「13億円遺産相続」のゆくえ 野崎さんきょうだいら・田辺市との“3すくみバトル”
NEWSポストセブン
平原容疑者の高校生時代。優しい性格だったという
【北九州・女子中学生刺殺】「まさかあいつが…」平原政徳(43)の高校クラスメイトが語った素顔「バスケ部で、喧嘩を止めるタイプだった」優しい男が凶悪犯に変貌した理由
NEWSポストセブン
民事裁判は今年11月26日、新井氏に165万円の支払いを命じた判決が確定している
【今度は「胸と太ももを触られた」と主張】群馬・草津町長からの“性被害でっちあげ”の罪に問われた新井祥子・元町議 初公判で主張した“わいせつ行為”の内容の不可解な変遷
NEWSポストセブン
送検時の平原容疑者(共同通信)
「大声出して何が悪いんだ!」平原政徳容疑者(43・無職)、事件3日前に「大量のカップ酒」空き瓶が…ゴミ収集車が行った後に 近隣住民が感じた恐怖【北九州・女子中学生刺殺】
NEWSポストセブン