薬を飲むことで健康になれる──そんな“常識”をただ真に受けていると大きな落とし穴が待っていることがある。胃薬にも知っておくべき研究結果がある。
2017年に香港大学が6万人超の患者を対象に研究した論文によると、胃酸分泌抑制剤のひとつであるプロトンポンプ阻害薬(PPI)を3年以上にわたって服用している患者は胃がん発症が8.3倍も多いと報告された。1~2年の服用でも胃がん発症率が5.0倍、2~3年で6.6倍となっている。
PPIは逆流性食道炎などの治療に使われる薬だ。逆流性食道炎の患者は近年急増しており、30年前に比べ罹患率は10倍、予備群を含めると患者は1500万人いるとされている。
胃酸の分泌を抑制する薬はPPI以外にも、薬局で購入できる「H2ブロッカー」というタイプが存在するが、こちらでは胃がんリスクの上昇はみられなかったという。セルフケア薬局池袋店の薬剤師・長澤育弘氏が解説する。
「H2ブロッカーに比べて、PPIのほうが胃酸分泌を抑制する作用が強い。胃酸の分泌を抑制しすぎることが、胃がんの発生に影響したと考えられます。PPIを安易に処方するのは勧められませんが、実際には、その効果の高さゆえに胸やけ程度でも処方する医師がいる。短期間の処方なら問題ないとされていますが、もしPPIを長期間処方されているなら、別の医師や薬剤師に相談してみるのがよいでしょう」
※週刊ポスト2019年10月18・25日号