アワビやウナギなど、高級海産物の密漁に暴力団が関与していることが問題となっている。長年、暴力団による食品業界への関与を取材し、新著『教養としてのヤクザ』を上梓したジャーナリストの溝口敦氏と鈴木智彦氏の2人が、「暴力団は他の食品業界にも食い込んでいる」と明らかにする。
鈴木:サカナ以外にヤクザが絡んでいる食品って、何かありますかね?
溝口:米はどうか。ありえないか。
鈴木:実家が農家というヤクザはたくさんいますけどね。実家がブドウやナシを作っているとか。
溝口:だけど、ヤクザとして農業には食い込んでいない。
鈴木:法律で「有機野菜を作るのが禁止」となったらヤクザは有機野菜を作るでしょうね。ありえないけど。
溝口:彼らが栽培するのは大麻ぐらい。
鈴木:私が取材したなかでは、首都圏でそこそこ知られた喫茶店チェーンを暴力団組員が経営していたという例がありましたし、有名なおにぎり店が山口組傘下系列のフロント企業だったこともありますね。
一昔前の話ですが、バターをたっぷり使った食パンがブームになったとき、関西の有名店を経営していたのが、実は九州の指定暴力団だったということがありました。当時、私がいたヤクザ専門誌にその団体の幹部が連載をしていたので、編集部にはいつもそのパンが差し入れされていました。けっこう旨かったです。今、高級食パンブームが起きているから、またやっているかもしれません。
それと、これは数年前の話ですが、バレンタインデーのチョコレートが高級化・ブランド化して、カカオの価格が上がったんですね。それに目を付けた知り合いの暴力団幹部は、カカオ豆の買い占めに乗り出した。付け焼き刃の知識で参入したところで失敗するだろうと思っていたんですが、そこはやっぱりヤクザで、海外から仕入れた賞味期限切れカカオやチョコレートを混ぜて問屋に販売して、莫大な利益を上げたんですよ。
溝口:ひどい話だ。
※溝口敦/鈴木智彦・著『教養としてのヤクザ』(小学館)より一部抜粋