天皇陛下が即位を宣言される『即位礼正殿の儀』が10月22日に行われる。世界の王室では、イギリスからはチャールズ皇太子、オランダのウィレム国王夫妻、スペインのフェリペ国王夫妻、ベルギーのフィリップ国王夫妻、サウジアラビアのムハンマド皇太子などが参列する予定だ。大統領などの首脳級では、ドイツのシュタインマイアー大統領、トルコのエルドアン大統領、フィリピンのドゥテルテ大統領、インドのコーヴィンド大統領らの参列が予定されている。
◆「世界最古の王朝」支えた天皇の人柄
なぜこれほどまでに多くの世界の要人たちが天皇陛下の即位に関心を持ち、集うのか。米出身の弁護士で、日本文化や皇室の歴史に詳しいケント・ギルバートさんはこう説明する。
「日本の皇室は、ほかに類を見ない、2000年以上続く『世界最古の王朝』です。歴史が長い国はほかにもありますが、国名が変わらずひとつの国として突出した歴史を持つ国は日本以外にはありません。そうした貴重な歴史の中心にいたのが、天皇と皇室なのです。
世俗の権力から一定の距離を置き、ひたすら国民の安寧を祈り続ける天皇という存在は、世界に唯一無二の奇跡的な存在です。そのことに、世界の国々が敬意と憧れを持っているのです」
実際、ギネスブックにも、日本の皇室は「世界最古の王朝」と記録されている。
上皇陛下から天皇陛下への譲位は、第119代光格天皇以来、約200年ぶりだったことが注目された。日本人にとっては“たった200年前か”という感覚だが、太平洋の向こうのアメリカ合衆国は建国そのものから250年も経っていない。アメリカ在住の作家で、国際外交関係に詳しい冷泉彰彦さんが解説する
「世界の外交の常識で言えば、総理大臣よりも、大統領よりも、国王よりも、エンペラー(天皇、皇帝)が最も“格式”が高い。首相や大統領はその時代の国民に選ばれた代表であり、国王は王家を継いできた人ですが、エンペラーは国の文化や宗教などを含めたもの、つまり“文明の代表”という位置づけになる。
たしかに20世紀まではドイツやオーストリア、エチオピアなどの国でエンペラーを名乗ることがあったが、長い歴史の中でずっとエンペラーであり続けたのは日本の天皇だけ。今の世界の主要国の中で、エンペラーはたった1人、日本にしかいないのです」
皇室がこれほど長い歴史を保てたこと自体が国民から敬愛されてきた証だと、ギルバートさんは続ける。
「海外では、フランスやロシア、イランなど国民による革命によって王室が廃絶に追い込まれたケースも少なくない。日本も終戦後に皇室廃絶運動やクーデターが起きても不思議ではありませんでした。しかし、昭和天皇は戦争で焼け野原になった全国各地をすすんで巡幸され、国民はそれを大歓待しました。
戦争で苦しみ、指導者に対する恨みや憎悪が高まる国も多いですが、日本人は“普通の国”とはまったく違う反応をしたのです」