台風19号による建物への浸水被害は、武蔵小杉(神奈川県川崎市)のタワーマンションエリアにまで広がり、大きな衝撃を与えた。いま、武蔵小杉に限らず多くのタワマン住民が懸念するのは、建物の脆弱性はもちろん、「資産価値が落ちてしまわないか」ということ。住宅ジャーナリストの榊淳司氏が、今回の台風がマンション市場全体にどんな影響を及ぼす可能性があるのか予測した。
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武蔵小杉にあるタワーマンションが、台風19号がもたらした大雨によって浸水した件は、予想以上に大きな注目を浴びている。
台風によって建物が損傷したわけではないにも関わらず、道路にあふれ出た雨水や下水が地下駐車場部分に侵入したことによって電力の供給が不可能となり、停電状態になったことが多くの人に衝撃を持って受け取られている。
そもそも「タワマンは災害に強い」と思われてきたが、地下階が浸水したことで、現実的には居住不能となってしまったのだから、想定外の出来事だったことは間違いない。
また、「武蔵小杉は水害に遭いやすいのか」という意外性も人々を驚かせた。タワマンが林立する武蔵小杉は、いかにも近代的で災害に強い都市だというイメージを人々に植え付けてきたはずだ。
「タワマンは意外に災害には脆弱かもしれない」──いま、そういう疑念が人々の間で広がりかけている可能性がある。ここで懸念されるのは、この出来事が武蔵小杉エリアに林立するタワマン群の“資産価値”にどのような影響をもたらすか、ということである。
2011年に発生した東日本大震災を例に考えてみたい。あの時、東北地方を中心に多くの方々が犠牲となった。その被害が大きすぎたことによって、首都圏で起こった液状化についてはあまり報道されなかった。
しかし、千葉県の新浦安エリアでは激しい液状化が起こり、地中にあった上下水道管が破壊された。水道の供給はもちろん、トイレも流せなくなったのだ。
新浦安の液状化エリアには多くのマンションがあった。また、同じく千葉県の海浜幕張エリアでもJRの駅付近が激しく液状化した。新浦安と海浜幕張は、比較的新しい埋立地だった。