台風19号の直撃とラグビーW杯決勝トーナメント進出で“ワリを食った”のは、この人かもしれない。10月9日にノーベル化学賞を受賞した吉野彰・旭化成名誉フェローの快挙は、わずか数日でメディアからほとんど消えてしまった。
「2002年に島津製作所社員の田中耕一さんがノーベル化学賞を受賞した時は、ワイドショーから夜のニュースまで、何日も連続で扱い続けました。今回も、『休日はゴロゴロしてばかり』なんて奧さんのコメントを聞くと、偉業とはほど遠いごく普通のおじさんにしか見えませんから(笑い)、吉野さんの仕事ぶりや私生活まで、もう少し掘り下げたかった。しかし台風を挟んでラグビー日本代表の快挙でそれどころではなくなってしまったんです」(キー局関係者)
そこで置き去りにされたのが、吉野氏の「名誉フェロー」という肩書きだった。
謙虚で素朴な人柄もあり、〈どのくらい偉いの?〉と、聞き慣れない役職への疑問がネット上にも多数書き込まれた。
「フェローは大学教員や研究員などその分野に著しい貢献があった者に与えられる肩書き」(人事ジャーナリストの溝上憲文氏)とのことだが、では名誉フェローはどれほどの地位なのか。旭化成の広報室に尋ねると、こんな回答だった。
「弊社は2017年から技術分野の専門家を『高度専門職』とする制度を導入しており、名誉フェローはその中の最高位です」
名誉フェローの待遇は非開示だが、その下のエグゼクティブフェローは「執行役員相当処遇」とされている(同社の資料より)。
吉野さん、実はめちゃくちゃ偉かった! 同じ会社員研究員でも、「主任」だった田中さんとは天と地の差。もしかして、そこがメディア的に扱いづらかったのか?
※週刊ポスト2019年11月1日号