W杯初の決勝トーナメント進出を果たしたラグビー日本代表の快挙に目を細めるのが、日本ラグビー界の黎明期を牽引してきた松尾雄治氏(65)だ。明治大学、新日鉄釜石を日本一に導き、日本代表としても不動のスタンドオフを務めた「ミスター・ラグビー」が、日本代表と自らの“笑いと涙の闘球史”を語り尽くした。
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いやあ、スコットランド戦には目頭が熱くなってしまった。
正直に言うと、僕はアイルランドに勝てると思ってなかったし、スコットランドも引き分けか3点差くらいで負けると予想していました。だけどメンタル面でもフィジカル面でも、日本代表は僕の想像を大きく上回っていた。
まずメンタル面での成長が素晴らしい。「絶対に勝つんだ」という集中力が漲ってますよ。
僕の時代は、世界の強豪を相手にすると、途中までいい勝負をしていても、どこかで「最終的には負けちゃうんじゃないか」と思っていた。その悲壮感が今の若い子たちにはまるでありません。「楽しんでやろうぜ」というポジティブさを感じますね。
僕が日本代表に選ばれたのは約45年前の明治大学3年の時でしたが、当時は世界でまったく勝てなかった。まだW杯ができる前で、イングランドやスコットランドみたいな強豪に平身低頭お願いして、なんとかテストマッチを組ませてもらっていた時代でした。
試合前にチームドクターが「あんなデカいヤツラにまともにぶつかったら内臓破裂で死ぬかもしれないから気をつけろ」と真顔で言う。で、その後で「必死でやってこい!」とコーチが言う。「必死」が文字通りなんですよ。そんなメンタルじゃ試合にならないでしょって(笑い)。