秋が深まるとともに薄着の女性が姿を消し、一抹の寂しさを感じる季節となった。しかしこの時期こそ堪能できるものがある。それがニットである。近年、「ニット乳」という布越しのエロスが注目されるようになった。ニット乳はいつから、どのような変遷を経てエロスの一ジャンルとして認められるようになったのか。アダルトメディア研究家の安田理央氏が解説する。
「1970年代のニット乳といえば、グラマーなボディーをニットで包んだ麻田奈美を思い出します。ただし、麻田奈美の出現は特例です。1990年代まではグラビア写真集も水着がメインで、ニットは場面を変えるための添え物でしかありませんでした」
1980年代、グラビアを飾る女性はアイドル歌手のようにスレンダーな体型がほとんどだった。しかし、イエローキャブに代表される巨乳グラドル軍団の登場により、1990年代は豊満な乳房を見せる水着グラビアが活況を呈した。
しかし、水着一辺倒の衣装では表現に幅がなく、飽きられやすいデメリットがあった。そこでグラビア制作者たちが着目したのが、より大人っぽいセクシーさを演出できるニットだったのだ。多くのグラビアの現場を経験したスタイリストはこう証言する。
「2000年代前半から、撮影現場にニットを用意するのが当たり前になりました」
またグラビア界のみならず、一般の人の目に触れる範囲でもニット姿の巨乳が注目されるようになる。ロケット乳で知られる柴田倫世、スイカップの古瀬絵理などのアナウンサーが巨乳として認知されたのも主にニット姿からだった。
「彼女たちは知名度もあり、現在の着衣巨乳・ニット乳の元祖といえます。そこで人々は隠されているのに巨乳が目立ってしまうニットの魔力に気付いたんでしょうね」(安田氏)
今シーズンも、女性たちの「ニットの誘惑」に男たちは翻弄されてしまうのだろう。
撮影■小倉雄一郎(モデル・三島奈津子)
※週刊ポスト2019年11月1日号