サッカー界でW杯は自分の価値を世界にアピールする「見本市」と言われる。香川真司、本田圭佑など日本代表で活躍した選手はW杯後、いずれもビッグクラブへとステップアップした。
では初の決勝トーナメント進出という大躍進をしたラグビー日本代表も、世界の有名チームからスカウトされるのか。ラグビージャーナリストの村上晃一氏がいう。
「前回W杯(2015年)では五郎丸歩が仏一部リーグの強豪トゥーロンからオファーを受けました。ただし今回は、それほど多くはないと思われます。日本代表の躍進は、チーム全体が機能的に動いた結果であって、フィジカル面で突出した選手はいない。
それよりも戦術面で日本を牽引したコーチ陣にスポットライトが当たっている。攻撃担当コーチのトニー・ブラウン氏はすでに母国・ニュージーランドのコーチ就任が確実視されています。続投が濃厚といわれるヘッドコーチのジェイミー・ジョセフ氏も海外クラブからの高額オファーを受ける可能性がある」
前回大会後にエディー・ジョーンズ前監督(オーストラリア出身)が、ラグビーの母国・イングランドから代表監督に招聘された前例もある。さらに日本の弱点だったスクラムを強化したスクラムコーチの長谷川慎氏の評価もうなぎ上りだという。
逆に、海外の有力選手が日本にやってくる流れも起きそうだという。
「海外リーグのトップ選手でも年俸は2000万~3000万円程度。報酬面でも環境面でも、日本のトップリーグは魅力的です。今回のW杯で日本のプレー環境やホスピタリティに好感を持った選手は多く、日本に大物が大挙してやってくるかもしれません」(同前)
過去にはニュージーランドの英雄ソニー・ビル・ウイリアムズが1年間パナソニックでプレーした例もある。今回は惜しくも準々決勝敗退となったが、日本が本場顔負けの「ラグビー大国」となる日も近そうだ。
※週刊ポスト2019年11月1日号