1970年代の『平凡パンチ』に掲載された“林檎ヌード”で一世を風靡した麻田奈美。実は、彼女こそがグラビア界における「ニット巨乳」の先駆け的存在だった。当時、彼女がニットを着た写真は『平凡パンチ』の表紙に採用されており、後世のグラビア表現にも影響を与えた。撮影した写真家・青柳陽一氏に撮影秘話を聞いた。
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私は女性のヌード撮影のテクニックのひとつとしてニットを使用していました。現場に入って、最初から裸の撮影を始めると、女のコも警戒します。モデルの心を和ませるためにニットやワイシャツを着た状態から徐々に脱いでもらっていました。麻田奈美のときにも、ヌードを撮る前に、分厚い白のニットを用意し、何枚か撮っています。
美しく自然なヌードを撮るためにはカメラマンとモデルに医者と患者のような信頼関係が求められます。カメラマンはモデルのことを第一に考え、守ってあげる気持ちでいなければなりません。私は当時18歳だった彼女を撮るとき、髪の毛を直す意外、一切手を触れませんでした。それゆえ彼女の信頼を得て、“伝説のヌード”を撮ることができたのです。
この写真はたしか沖縄が日本に返還された翌年、久米島でロケをしたときのものです。写っているオレンジ色のニットは、本人の私物です。当時は、スタイリストもおらず、本人の普段着ならリラックスできるかと考え、持ってきてもらいました。彼女の特徴である肉体の豊満さがよく出ている写真だと思います。
このニットが面白かったのは透けるところでした。ブラジャーを着けずに撮影するとニットの網目の隙間から乳首が透けて見えますし、大きく盛り上がった胸のフォルムも印象的です。撮影者は「見たい」という男の欲望を逆手に取って、ほんの少しだけ、胸の姿をチラリと見せる。見えそうで見えないこのチラリズムは、ニットが醸し出すエロスにもありますし、股間だけ果物で隠す林檎ヌードにも通じる仕掛けです。
【profile】あおやぎ・よういち/1938年生まれ。福島県伊達市出身。写真家。多摩美術大学在学中に写真家・杵島隆氏に師事。1962年からフリーカメラマンとなり、女性ポートレート、広告写真などで活躍。近著として電子書籍版『岩魚が呼んだ』(小学館)を10月に上梓。
※週刊ポスト2019年11月1日号