「定年後の働き先」の第1選択肢となるのが継続雇用だが、給与は大幅減額となることがほとんど。仕事内容も責任を感じられなくなり、肩身の狭い思いをすることも少なくない。そこで、「アルバイト生活に転じる」という選択肢もある。
岩本陽平さん(63)は食品メーカーで営業畑を歩んできたが、60歳で退職し、バーテンダーの仕事に就いた。
「バーはバーテンダーの人柄がすべてなんです。お酒は料理と違って、店ごとに大きく味が変わることはありません。常連ができるたびに自分を認めてくれたという達成感があるんです」(岩本さん)
都内の繁華街の一角にある10席ほどのバーで、岩本さんは、週に3日、1人で店を切り盛りする。月~木曜は18時から深夜2時、金土は朝4時まで。時給は1500円で、月給は15万円ほどになるという。
「客が何を求めているかは千差万別。話してほしいのか、そっとしておいてほしいのか。服装やしぐさ、表情、声のトーンなど五感を働かせて見極めます。営業職時代に鍛えたスキルの見せ所ですし、商品に左右されない人間同士の勝負なのでやりがいもある」
問題は求人の見つけ方だ。個人経営の店が多く、ネット求人の広告費が負担になるため、募集は珍しい。
「行きつけのバーがあれば相談してみるといい。狭い業界なので、横のつながりで紹介してくれる可能性が高い」(岩本さん)
※週刊ポスト2019年11月1日号