ライフ

【岩瀬達哉氏書評】料理人類学を開拓した破天荒な半生記

『座右の銘はない あそび人学者の自叙伝』/石毛直道・著

【書評】『座右の銘はない あそび人学者の自叙伝』/石毛直道・著/日本経済新聞出版社/1800円+税
【評者】岩瀬達哉(ノンフィクション作家)

 考古学者を目指していた著者が、文化人類学へと研究進路を変え、「料理人類学という分野を開拓」してきた破天荒で痛快な半生記。座右の銘によって、かくあるべしという枠を自分に課すことを嫌い、「『おもろい』ことで時間を消費し、その副産物として」の研究成果をものにしてきた。

 転機となったのは、京大大学院の院生としてインドネシア領ニューギニアの西イリアン学術探検隊に参加したことだった。遺跡の出土品からではなく、石器時代の生活様式が残る部族とのナマの暮らしから、文明の未来を探る人類学に魅了されてしまったのである。

 新京都学派の大御所、生態学の今西錦司に目をかけられ、「文明の生態史観」で一世を風靡していた梅棹忠夫からは、牙をむきだせ。牙を失ったイノシシはブタになってしまう。ブタになるな!と鍛えられた。

 梅棹研究室の助手としてアフリカに送り出されるや、居候として部族の家に転がり込み、「家族が起きるときには一緒に起床し、朝食を共にしたあと、畑仕事にも、放牧にもついていき」「だいたいのことがわかったら、別の家庭に居候をする」。この「居候方式」によって、生活様式と物資文化の比較を短期間に成し遂げた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

インタビュー中にアクシデントが発生した大谷翔平(写真/Getty Images)
《大谷翔平の上半身裸動画騒動》ロッカールームでのインタビューに映り込みリポーター大慌て 徹底して「服を脱がない」ブランディングへの強いこだわり 
女性セブン
映画『八日目の蝉』(2011)にて、新人俳優賞を受賞した渡邉このみさん
《ランドセルに画びょうが…》天才子役と呼ばれた渡邊このみ(18)が苦悩した“現実”と“非現実”の境界線 「サンタさんを信じている年齢なのに」
NEWSポストセブン
アーティスト活動を本格的にスタートした萌名さん
「二度とやらないと思っていた」河北彩伽が語った“引退の真相”と復帰後に見つけた“本当に成し遂げたい夢”
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、小泉家について綴ります
《華麗なる小泉家》弟・進次郎氏はコメ劇場でワイドショーの主役、兄・孝太郎はテレビに出ずっぱり やっぱり「数字を持っている」プラチナファミリー
女性セブン
調子が上向く渋野日向子(時事通信フォト)
《渋野日向子が全米女子7位の快挙》悔し涙に見えた“完全復活への兆し” シブコは「メジャーだけ強い」のではなく「メジャーを獲ることに集中している」
週刊ポスト
1966年はビートルズの初来日、ウルトラマンの放送開始などが話題を呼んだ(時事通信フォト)
《2026年に“令和の丙午”来たる》「義母から『これだから“丙午生まれの女”は』と…」迷信に翻弄された“昭和の丙午生まれ”女性のリアルな60年
NEWSポストセブン
6月2日、新たに殺人と殺人未遂容疑がかけられた八田與一容疑者(28)
《別府ひき逃げ》重要指名手配犯・八田與一容疑者の親族が“沈黙の10秒間”の後に語ったこと…死亡した大学生の親は「私たちの戦いは終わりません」とコメント
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問される佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
《ブラジルへ公式訪問》佳子さま、ギリシャ訪問でもお召しになったコーラルピンクのスーツで出発 “お気に入り”はすっきり見せるフェミニンな一着
NEWSポストセブン
渡邊渚さんが性暴力問題について思いの丈を綴った(撮影/西條彰仁)
《渡邊渚さん独占手記》性暴力問題について思いの丈を綴る「被害者は永遠に救われることのない地獄を彷徨い続ける」
週刊ポスト
 6月3日に亡くなった「ミスタープロ野球」こと長嶋茂雄さん(時事通信フォト)
【追悼・長嶋茂雄さん】交際40日で婚約の“超スピード婚”も「ミスターらしい」 多くの国民が支持した「日本人が憧れる家族像」としての長嶋家 
女性セブン
母・佳代さんと小室圭さん
《眞子さん出産》“一卵性母子”と呼ばれた小室圭さんの母・佳代さんが「初孫を抱く日」 知人は「ふたりは一定の距離を保って接している」
NEWSポストセブン
アーティスト活動を本格的にスタートした萌名さん
「二度とやらないと思っていた」河北彩伽が語った“引退の真相”と復帰後に見つけた“本当に成し遂げたい夢”
NEWSポストセブン
1966年はビートルズの初来日、ウルトラマンの放送開始などが話題を呼んだ(時事通信フォト)
《2026年に“令和の丙午”来たる》「義母から『これだから“丙午生まれの女”は』と…」迷信に翻弄された“昭和の丙午生まれ”女性のリアルな60年
NEWSポストセブン