健康で長生きしたいからこそ、日々の生活で摂生したり、時間や手間をかけて検査を受けたりする──だが、それによってむしろ健康が損なわれているとしたら、これほど皮肉なことはない。
実は、会社員であれば毎年義務づけられ、リタイアしてからも自治体などが無料で行なっている「健康診断」には、落とし穴が多い。毎年の結果が正常値であれば安心──それは、大きな誤解だ。医療経済ジャーナリストの室井一辰氏がいう。
「健康診断の主たる目的は、『生活習慣病』を減らすことで、がんや脳梗塞、心筋梗塞といった重大疾患に罹るリスクを避けること。しかし、時代遅れなせいで発見率が悪かったり、無駄な医療につながったりする手法が残ってしまっている例があります」
自費でがん検診や人間ドックを受診していても、同様の心配がある。
「本来治療が不要な状態にもかかわらず“陽性”と反応してしまったり、体に大きな負担をかけて後遺症が残るリスクを生じさせる過剰な検査や治療でかえって健康を損ねかねないものもある。
健康診断などでは全員が一律同じ項目を受けますが、『この検査さえ受けていれば安心』と考えてしまうのではなく、患者は、それぞれに応じた“自分に合った検査”を受ける必要があります」(同前)
※週刊ポスト2019年11月8・15日号