NHK Eテレの『きょうの料理』でもおなじみ、現役最高齢94才の日本料理研究家、“ばぁば”こと鈴木登紀子さんが、秋の味覚について教えてくれました。
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このたびの台風では大変なことになってしまいました。愛するご家族を亡くされたかたがたにお悔やみ申し上げるとともに、被災した地域のみなさまには、一日も早く平穏な生活に戻れますよう、ばぁばは心からお祈り申し上げます。
◆手に入りやすくなった松茸を鍋仕立てでごちそうに
秋が突然、到来いたしました。朝晩はたいそうな冷え込みです。油断をするとクシュン!ときますから、どうかご自愛くださいね。
10月は神無月。全国の神様が国事を話し合うため出雲大社に大集合になり、出雲以外は神様不在になることから、「神のいない月」=神無月と名付けられたともいわれています。
神無月はまた、松茸の季節でもあります。「留守にして申しわけない。せめて松茸の香りを楽しんで、諍いなく安穏と過ごせ」という、神様からの贈り物かもしれませんね(笑い)。
残念なことに近年、国産の松茸は、とてもとても庶民の口に入るものではなくなりました。その代わりに輸入ものの松茸が、ぐっとお手頃な価格で店頭に並ぶようになりました。
ひと頃前までは、正直言って香りも食感も今ひとつでしたけれど、近年は質のよいものが出回るようになりました。そのおかげで、今も10月のお教室では土瓶蒸しを生徒さんに味わっていただけるのです。
なかでもばぁばは、カナダ産の松茸を気に入っております。日本と同様に、ロッキー山脈はじめ野山が豊かなお国柄だからでしょうか。輸送に時間がかかるため風味は多少落ちますが、なかなかのお味ですよ。
でもね、日本人にとって松茸はその香りがごちそうですが、欧米のかたは好まれないんですって。ところ変われば…ですわね。
●松茸の仕事
「松茸はもちろん、きのこ類はすべからく柔らかい布巾で汚れを拭き取るのですが、輸入ものの松茸は汚れが落ちにくいので水洗いします」(ばぁば)
【1】ガーゼなど柔らかい布を使い、流水の下でポンポンと軽く叩くようにしてこびりついた土汚れを落とす。
【2】石突きの硬いところを包丁で削ぎ落とす。
【3】かさが付いたまま薄切りにする。
【4】松茸1本につき酒大さじ1~2をふりかけてしばらく置き、風味を立てる。
●ぎんなんの仕事
【1】ぎんなんはかまぼこの板など小さめの板にのせる。包丁の背を殻の筋目に垂直に当て、軽くポンと叩く。
【2】中の実を傷つけないよう、ひびが入る程度でOK。
【3】割れたところからそっと殻をむく。小さな鍋にひたひたの水、塩少量を入れ、薄皮がついたままのぎんなんを加える。中火にかけ、穴あきのお玉でぎんなんの表面をコロコロと転がすと薄皮がはがれる。
●エリンギの仕事
【1】エリンギはガーゼなどで軽く拭いた後、包丁で石突きの硬い部分を削ぎ落とす。
【2】大きなものは1本を3等分する。
【3】厚さを揃えたひと口の薄切りにする。
●『松茸の小鍋仕立て』の作り方(3人分)
【1】春雨100gは袋の表示通りにゆでてざるに上げておく。
【2】松茸(大)1本は流水で汚れを落とし、石突きの硬い部分を削ぎ落として薄切りにする。酒大さじ2~3をふっておく。エリンギ(大)1本は石突きを削ぎ落として3等分に、薄切りにする。えのきたけ1/2株は石突きを落としざっとほぐす。
【3】鶏ささみ3枚は筋を取り、削ぎ切りにして酒少量をふる。
【4】ぎんなん10個は【ぎんなんの仕事】を参照して殻を割り、薄皮を除く。
【5】レタス数枚は芯の部分を除いて食べやすい大きさにちぎる。
【6】小ぶりの土鍋に食べやすい長さに切った春雨を敷き、ぎんなんを除く材料を入れてかつおだし3~4カップを注ぐ。ぎんなんを散らし、蓋をして火にかける。煮立ちがきたら火を止めて食卓へ。スープとともに器にとり、すだちを搾っていただく。
※女性セブン2019年11月7・14日号