10月18日早朝、小雨降る東京・府中刑務所前には規制線が張られ、マスコミ各社のカメラマンが場所取りに据えた三脚が乱立していた。午前5時50分頃、6年間の服役を終えた六代目山口組ナンバー2・高山清司若頭が、高級ミニバンに乗って出所すると、報道陣のフラッシュやライトで正門前は白昼の明るさとなった。
高山若頭は六代目山口組の“司令塔”だ。2015年、山口組創立100周年の節目に起こった分裂劇は、キーマンが社会不在となる間隙を突いて決行された。
本来なら出所後は、神戸市の六代目山口組総本部に直行し、離脱組にプレッシャーをかけたかったろう。だが出所の8日前、中核団体・弘道会のヒットマンが神戸山口組の中核団体・山健組事務所前で2人の組員を射殺した事件を受け、総本部は暴対法に基づく事務所使用制限の仮命令が発令されている。娑婆に戻った若頭は、総本部に立ち入ることができず、JR品川駅から新幹線で、弘道会のお膝元・名古屋に向かった。
品川駅では、メディアの数以上に兵庫県警、愛知県警の捜査員をはじめ、私服警官でごった返した。警視庁からは組織犯罪対策第三課長、組織犯罪対策第四課長、防弾チョッキを着た参事官まで送り込まれていた。
「警察が一番張り切って騒ぎ、高山若頭の出所を演出した格好です」(社会部記者)
高山若頭がいつ到着してもすぐに乗車できるよう、数本分のグリーン車指定席を買っていたようで、出発間際になると組員らしき2人の男性が窓口を訪れ、不要になった大量の乗車券を払い戻していた。
新たな局面を迎えた分裂抗争はどこへ向かうのか。高山若頭の一挙手一投足に関係者は注目している。
●文・鈴木智彦(フリーライター)
※週刊ポスト2019年11月8・15日号