健康診断の項目に必ず入っている胸部X線検査(レントゲン)。肺に起きた異常を写し出す検査だが、実は日本人男性の死亡数第1位である「肺がん」を見付けるのは難しいという。NPO法人医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師が解説する。
「早期の肺がんは1~2センチ程度なのですが、X線写真は解像度が低いため、その大きさのがんを発見できない。見つけられる大きさになったものは多くの場合、ステージIII~IVに進行してしまっている。また、心臓や肋骨と重なった部分のがんを見付けられないケースも多い」
それにもかかわらず健康診断に組み込まれている理由について、ナビタスクリニック川崎の谷本哲也医師が解説する。
「胸部X線検査はもともと、蔓延した結核への対策として健康診断に戦後導入されたもの。もちろん肺がんが見付かることはありますが、世界的に見ても『がん検診で胸部X線検査は用いない』というのが常識になりつつある」
では、代わりにどんな検査を受ければよいのか。上医師が話す。
「『低線量CT』を受けるのがいいでしょう。通常のCTは放射線被ばくが大きいですが、低線量CTはその10分の1で済む。費用は自己負担なので医療機関によって異なりますが、5000~1万円程度です。2次元の写真として肺を写し出す胸部X線検査と異なり、CTは人体を輪切り状にした3次元で写し出すため、他の臓器に隠れたがんも見つけ出すことができる。また、画質が高いため、小さな早期がんでも発見しやすい。
この検査を受けたほうがいいのは、50代以上で喫煙習慣のある人やがん家系の人などハイリスクな人たちです」
※週刊ポスト2019年11月8・15日号