吉本芸人の闇営業問題など、「半グレ」と呼ばれる犯罪集団の存在に注目が集まっている。かつて反社会的勢力と言えば「ヤクザ」が代名詞だったが、時代は変わった。長年の暴力団取材のエッセンスを『教養としてのヤクザ』(鈴木智彦氏との共著)にまとめたジャーナリストの溝口敦氏が、その変化を分析する。
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ヤクザ、暴力団をしのぐ勢いで半グレ集団の暗躍が目立っている。警察はその勢力や参加メンバーを把握しておらず、特殊詐欺の被害額などから、わずかに彼らの増殖を推測しているに過ぎない。半グレがヤクザに比べて人数が多いのか少ないのか、その1人当たり稼ぎ額がヤクザより多いのか少ないのか、ほとんど何もわかっていない。単に彼らの犯罪による被害額の一部が統計により明らかにされているだけだ。たとえば2018年、彼らによる特殊詐欺被害額は356億8000万円に及んだ。
半グレ集団は特殊詐欺以外にも新しいシノギを創出している。金のインゴット密輸、ビットコインの販売やマイニング(掘削)、少し前には危険ドラッグの製造と販売、そして2003年頃オレオレ詐欺などの特殊詐欺を考案、以後一貫して実行し、太い資金源としてきた。
ヤクザのなかには半グレからノウハウを学び、それらをシノギとしている者もいるが、おそらくこれら新シノギによる稼ぎ額は、ヤクザ、暴力団が伝統的に行なっている覚せい剤の密売、各種の賭博開帳、恐喝、管理売春などの総額より多いだろう。国民のこうむる被害額はヤクザより、むしろ半グレによるもののほうが多いのではと疑われる。
ヤクザは暴力的にはともかく、経済的には半グレに押されている。半グレはもともとヤクザの親分-子分関係には従えないとするグループである。ヤクザに接近すると、ヤクザからたかられるだけと警戒する者たちだから、基本的に両者は別立ての犯罪集団である。だが、ヤクザの零細化につれ、ヤクザからさえも脱落する元組員たちを吸収する受け皿にもなる。少数だが、逆に半グレからヤクザに移籍する者もおり、一部で両者の混ざり合いが見られる。