国内

一般参賀でおなじみの皇居の宮殿 原則に反した作りの理由

宮殿長和殿と松の塔(撮影/竹内正浩)

 徳川将軍家の居城として、江戸文化の中心地として、戦後日本を見守る象徴として、400年以上にわたって日本の歴史の中心だった奇跡の場所・皇居。令和のスタートに再び注目を浴びる皇居の謎に迫る。

◆宮殿はなぜ東向きか

 正月や天皇誕生日の一般参賀の“お手振り”でおなじみの宮殿は、皇居の中でも比較的新しい建物で、完成したのは昭和43年(1968)。鉄骨鉄筋コンクリート造で、勾配のある屋根と深い軒(のき)の出が特徴的だ。

 延べ面積は7326坪で、正殿、豊明殿、長和殿など全7棟で構成されている。歴史探訪家で『最後の秘境 皇居の歩き方』著者の竹内正浩さんが解説する。

「実はこの宮殿、伝統的な宮殿建築の原則に反した造りになっていることが注目されます」

 日本には古来より中国から伝わる「天子南面」という考え方があり、天から統治を許された天皇は北を背にして、南を向いて座ることが不文律とされてきた。このルールは宮殿建築の設計に取り入れられ、明治宮殿(昭和20年の空襲で焼失)までは固く守られてきた。

「これを破ったのが、宮内庁の官僚であり、いわばプロデューサーとして宮殿設計を指揮した高尾亮一です。昭和天皇も信頼を寄せていた。高尾は自書『宮殿をつくる』に、『建物の配置計画を変更してまで南面に固執する必要はなかろう。それで関係者の了解を求めて、その原則は解除してもらった』と書き残しています。儀式や行事における人の動線や、合理性を重視し、昭和天皇をはじめ、関係者の了解を得て天子南面の原則を破ったのです」(竹内さん)

 国民に開かれた皇室の新時代を、新宮殿の設計で体現したのである。今日の一般参賀の賑わいも、高尾の創意工夫なくしてはあり得なかったかもしれない。

※女性セブン2019年11月7・14日号

一般参賀でも長和殿はおなじみ(時事通信フォト)

関連記事

トピックス

タイ警察の取り調べを受ける日本人詐欺グループの男ら。2019年4月。この頃は日本への特殊詐欺海外拠点に関する報道は多かった(時事通信フォト)
海外の詐欺拠点で性的労働を強いられる日本人女性が多数存在か 詐欺グループの幹部逮捕で裏切りや報復などのトラブル続発し情報流出も
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
《虫のようなものがチャーシューの上を…動画投稿で物議》人気ラーメンチェーン店「来来亭」で異物混入疑惑が浮上【事実確認への同社回答】
NEWSポストセブン
6月9日付けで「研音」所属となった俳優・宮野真守(41)。突然の発表はファンにとっても青天の霹靂だった(時事通信フォトより)
《電撃退団の舞台裏》「2029年までスケジュールが埋まっていた」声優・宮野真守が「研音」へ“スピード移籍”した背景と、研音俳優・福士蒼汰との“ただならぬ関係”
NEWSポストセブン
小室夫妻に立ちはだかる壁(時事通信フォト)
《眞子さん第一子出産》年収4000万円の小室圭さんも“カツカツ”に? NYで待ち受ける“高額子育てコスト”「保育施設の年間平均料金は約680万円」
週刊ポスト
週刊ポストの名物企画でもあった「ONK座談会」2003年開催時のスリーショット(撮影/山崎力夫)
《追悼・長嶋茂雄さん》王貞治氏・金田正一氏との「ONK座談会」を再録 金田氏と対戦したプロデビュー戦を振り返る「本当は5打席5三振なんです」
週刊ポスト
打撃が絶好調すぎる大谷翔平(時事通信フォト)
大谷翔平“打撃が絶好調すぎ”で浮上する「二刀流どうするか問題」 投手復活による打撃への影響に懸念“二刀流&ホームラン王”達成には7月半ばまでの活躍が重要
週刊ポスト
懸命のリハビリを続けていた長嶋茂雄さん(撮影/太田真三)
長嶋茂雄さんが病に倒れるたびに関係が変わった「長嶋家」の長き闘い 喪主を務めた次女・三奈さんは献身的な看護を続けてきた
週刊ポスト
6月9日、ご成婚記念日を迎えた天皇陛下と雅子さま(JMPA)
【6月9日はご成婚記念日】天皇陛下と雅子さま「32年の変わらぬ愛」公務でもプライベートでも“隣同士”、おふたりの軌跡を振り返る
女性セブン
(インスタグラムより)
「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画…直後に入院した海外の20代女性インフルエンサー、莫大な収入と引き換えに不調を抱えながらも新たなチャレンジに意欲
NEWSポストセブン
中国・エリート医師の乱倫行為は世界中のメディアが驚愕した(HPより、右の写真は現在削除済み)
《“度を超えた不倫”で中国共産党除名》同棲、妊娠、中絶…超エリート医師の妻が暴露した乱倫行為「感情がコントロールできず、麻酔をかけた患者を40分放置」
NEWSポストセブン
清原和博氏は長嶋さんの逝去の翌日、都内のビル街にいた
《長嶋茂雄さん逝去》短パン・サンダル姿、ふくらはぎには…清原和博が翌日に見せた「寂しさを湛えた表情」 “肉体改造”などの批判を庇ったミスターからの「激励の言葉」
NEWSポストセブン
貴乃花は“令和の新横綱”大の里をどう見ているのか(撮影/五十嵐美弥)
「まだまだ伸びしろがある」…平成の大横綱・貴乃花が“令和の新横綱”大の里を語る 「簡単に引いてしまう欠点」への見解、綱を張ることの“怖さ”とどう向き合うか
週刊ポスト