阪神タイガースを象徴する選手は、巨人へのライバル心を隠さず、実際に巨人キラーの姿を見せてくれる選手こそふさわしいと言われる。長年の阪神ファンの誰もが認め、ミスター・タイガースと呼ばれた村山実は、打倒・巨人、打倒・長嶋茂雄に燃えたことで知られる。その原点は1959年の天覧試合で長嶋茂雄に打たれたサヨナラホームランだった。
「最後までファールと言い張ったが、判定が覆るはずがない。あの瞬間から長嶋が宿敵となり、1500、2000奪三振は“長嶋から取る”と予告し、実現してみせた。その姿に阪神ファンは酔いしれた」(デイリースポーツ元編集局長・平井隆司氏)
闘志むき出しの村山のフォームは、苦しみながらも走り切る天才ランナーのエミール・ザトペックから「ザトペック投法」と名付けられ、その悲壮感が多くのファンから支持された。
村山イズムを継承したのが江夏豊だ。村山の引退試合では騎馬を作ってマウンドまで運び、江夏もまた2500奪三振とシーズン最多の354奪三振目を王貞治から取っている。
※週刊ポスト2019年11月8・15日号