香港では今年6月から若者を中心とした市民による激しいデモなどによる騒乱状態が続いているが、香港特別行政区政府は来年度予算に「総合テロ対策警察訓練施設集中地域」と称する反テロ訓練施設の建設費として19億香港ドル(約260億円)の予算を計上していることが明らかになった。
この反テロ訓練施設の建設計画の立案にあたっては、香港警察の李家超保安局長が少数民族のテロが多発している中国新疆ウイグル自治区にある武装警察部隊(武警)の「テロ対策施設」や少数民族の市民を再教育する「再教育キャンプ」を視察。それもあり、香港での施設建設の目的は反中的で暴力的な手段を用いがちな香港のデモ隊封じであるのは明らかだ。
香港の反テロ訓練施設の建設予定地は中国の深セン市との境界近くにある香港警察の「新屋嶺拘留センター」と隣接する林野で、広さは19ヘクタールと東京ドーム4個分に相当する。
この訓練施設には100台以上のパトカーが一度に訓練できるパトカー運転訓練場やヘリポートに加えて、拳銃、ライフル、散弾銃、ソニック・ガン(音波を使った銃器)などさまざまな射撃訓練を実施する射撃場や火器訓練施設が含まれている。
香港紙『蘋果(リンゴ)日報』によると、新疆ウイグル自治区のテロ対策施設などを視察した李局長はさきごろ、立法会(議会に相当)の財務委員会に出席し、特別訓練施設を盛り込んだ「対テロ対策施設事業案」を提出。
立法会議員が、この訓練施設について説明を求めたところ、李局長は「テロ対策やその他の専門行動のための高度戦術訓練施設」と答えており、その後、正式に来年度予算に施設事業案の建設予算が計上されたという。
しかし、香港の民主化活動家グループの間では施設建設についての反発が強まっており、「香港にビン・ラディン(テロリスト)がいないのは明らかだ。『対テロ』訓練が一般市民のデモ鎮圧のためであることは明らかである」などと建設計画を強く批判している。
また、中国政府は香港でのデモが日増しに激化しつつあることについて、「テロに近い行為」だと批判を強めていることから、香港の民主化活動グループは「新疆ウイグル自治区における対テロ施設を参考にしたという香港政府および警察は今後、テロ対策を名目にして、非人道的な取り締まりを強めることになる」との声明を発表。強い警戒感を露わにしている。