事件の解明に監視カメラの画像が使われることは珍しくなくなっている。習近平政権下の中国はいわゆる「カメラ大国」だが、ここで紹介するような事件の展開はやがて日本でも起こり得るのかもしれない。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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10月中旬に中国で、ある女子大生の溺死事件がメディアで大きく取り上げられ、話題となった。場所は、雲南省昆明市を流れるパン龍江という河だ。溺れ死んだのは、同市内の大学に通う女子大生の李さん。まだ19歳に満たない2年生だった。
事件が幕を開けたのは、9月9日の未明、突然男の声で「人が河に落ちた」と叫ぶのが響いた。
それからおよそ50分後。李さんの家族は警察の連絡を受けた。2時52分のことだ。そのときの警察の説明によると、李さんは入水自殺をはかったというもので、「友達と約束して」二人で飛び込んだというのだ。だが、一緒に自殺した人物は見当たらない。まもなく警察の説明も、「酒に酔った末の自殺」となった。
李さんの家族が不信感を募らせる一方、河に落ちた李さんの捜索は続いた。だが、残念なことに11日になって家族のもとに李さんの遺体が届けられた。
警察の「自殺」という説明に家族は納得できなかった。明るい性格で、家族ともよく話し、悩んでいる様子もなく、何より彼女には楽しみにしていた旅行の予定もあった。いったい李さんの身に何が起きたのか。
河に飛び込む直前の李さんは、ルームメイトと、その男友達2人と食事をして、そのあと軽く酒を飲むために移動していた。そこで家族は警察に依頼し、最後の店の店内の様子を写した監視カメラの映像を観ることにしたという。この内容、前半の1時間については警察も確認していた。
だが、残りの2時間の後半に差し掛かった時、家族は驚くべきシーンを目撃することになった。それは、男がベンチシートに横たわる李さんの上に馬乗りになって大声で怒鳴っているシーンと、その後に彼女の顔を押さえつけて平手打ちをするシーンであった。
これらのシーンがネットで公開されると世間の事件への関心が高まったのは言うまでもない。現在、すでにこの問題では捜査チームが組まれ再捜査が行われている。