近年注目度が高まっている食事法には、リスクが潜む。そのひとつが「グルテンフリーダイエット」だ。
グルテンとは、小麦などに含まれるたんぱく質のこと。グルテンフリーは、小麦を原料とした食品を摂取しないことで免疫力向上やダイエット効果が見込めるという食事法だ。テニスプレーヤーのノバク・ジョコビッチや有名モデルがグルテンフリー食を取り入れていることで話題となった。
しかし、日本のグルテンフリーブームには誤解があるという。『体を悪くする やってはいけない食べ方』(青春出版社刊)の著書がある、健康検定協会理事長で管理栄養士の望月理恵子氏が指摘する。
「グルテンフリー食は本来、小麦アレルギーや、北欧や米国に患者が多いセリアック病(遺伝性のグルテン不耐症)の患者のために開発された“治療法”の一種です。これらの疾患を持たない健康な人が実践して、効果を発揮するという科学的根拠を示す論文は発表されていません」
むしろ健康な人がグルテンフリー食を取り入れることで、健康を害する懸念が指摘されている。
「2017年に米ハーバード大学が発表し、米国心臓協会の学会で報告された論文は注目に値します。調査では、20万人を対象に長期の研究を行なった結果、1日4以下のグルテンしか摂取しなかった人は、12以下の標準的な量のグルテンを摂取した人に比べて2型糖尿病のリスクが13%上昇しました」(望月氏)
同研究によると、グルテンフリー食では2型糖尿病の予防因子である食物繊維や微量栄養素が不足し、栄養価が低いことが原因として考えられるという。アレルギーやセリアック病などの医療適応でない限り、ダイエット目的でのグルテンフリーは避けたほうが良いだろう。
※週刊ポスト2019年11月8・15日号