プロ野球選手がフリーエージェント(FA)制度を活用すると宣言したときは、たいてい、そのときの契約条件よりも好条件を得ることを目指すものだ。ところが、“宇宙人”と呼ばれた新庄剛志は2000年に行ったFA宣言でもその本領を発揮した。阪神、ヤクルト、横浜の3球団が好条件を出して争奪戦を繰り広げたが、新庄が会見で発表した移籍先はなんとニューヨーク・メッツだった。
当時、球団専務として残留交渉を続けた野崎勝義氏が語る。
「阪神は5年12億円+希望する背番号1を提示。他球団より好条件でした。確かに新庄君は阪神を取り巻くマスコミが大変だと移籍したがっていましたが、メッツを選んだのは予想外でしたね。我々も会見直前の最終交渉で聞かされました。夢のためにそこまでリスクを背負うのかと思いましたね」
新庄は阪神残留を勧める両親や親戚にも相談していなかったという。当時、球団グッズの売り上げの8割を占めていた宇宙人の選択は、阪神に大きな痛手となった。
※週刊ポスト2019年11月8・15日号