兵庫県明石市が、離婚相手から子どもの養育費を受け取れずに困窮するシングル家庭を減らそうと、支払いに応じない親に罰則を科したり、氏名を公表したりするなどの条例制定を検討していることを発表し、大きな議論を呼んでいる。自身もシングルマザーである作家の内藤みか氏が、養育費対策がなかなか進まない日本の現状をレポートする。
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明石市が養育費の不払い者の給与差し押さえや、過料(行政上の罰則金)を課すことを検討していることを発表しました。日本で養育費を継続的に受け取れている母子家庭は、養育費の取り決めをしていない世帯も合わせると、全体の24.3%(厚労省・平成28年度全国ひとり親世帯等調査より)のみ。なんと75%以上の父親が支払っていないのです。
◆養育費が支払われば、自治体の負担が減る
明石市では、市長自らが現在の24.3%の支払い率を5年以内に50%以上にすると明言しています。養育費不払い者には5万円以下の過料を課し、養育費をもらえていないシングルマザーには過料と同額の「養育支援金」を支給することも検討中なのだとか。
なぜ明石市は全国で先陣を切って養育費対策に乗り出したのでしょう。
養育費を父親が払ってくれない場合、シングルマザーの生活はどうなるかというと、その分、収入が低くなります。そうなると年収も下がり、受け取る児童扶養手当の額は増えます。児童扶養手当は年収に応じてスライドし、満額で月額4万2900円ほどですが、シングルマザーの年収が上がればゼロにもなります。
この児童扶養手当はどこが負担しているかというと、3分の1が国、3分の2が地方自治体です。そして、養育費が支払われていれば、その額はシングルマザーの収入に加算されます。
つまり、養育費がきちんと支払われていえば、シングルマザーは増収になり、児童扶養手当の支給額は減り、自治体の負担も少なくなるのです。財政に直結する無視できない問題だからこそ、明石市は思い切った対策に乗り出したのではないでしょうか。