横浜とともに日本を代表する港町の「神戸」。三宮など繁華街は今や全国チェーンの飲食店が軒を連ね、昔ながらの風情は失われつつある。だが、三宮と西宮の間に位置し、セレブタウンの芦屋にも程近い町「岡本」周辺には、おしゃれな喫茶店や雑貨店などが多数あり、県外からの注目度も高まっているという。神戸国際大学経済学部教授で総務省地域創造力アドバイザーの中村智彦氏が、“裏岡本”の魅力を紹介する。
* * *
10月下旬、JR西日本が終電時間の繰り上げを検討しているというニュースが流れた。働き方改革や保線業務に当たる社員の確保が難しいといった理由からだ。しかし、もうひとつ理由として、深夜の利用客が減少していることが挙げられた点については、少し複雑な思いを持った人も多いようだ。
JR三宮駅の深夜0時の利用客は、2018年度と比較して19%も減少しているという。三宮で古くから飲食店を営む経営者も、こう寂しそうに言う。
「震災後、三宮駅前の飲食店は次々と全国チェーン店に変わり、客引きが並ぶ光景は以前の神戸にはなかった。震災前の賑わいはもう戻らないのかもしれない」
60代のサラリーマンも、「神戸らしい店がめっきり減って、久しぶりに訪れた友人が『これでは大阪市内と変わらない』と嘆いていた」と話す。筆者も知人が神戸を訪問した際に、「神戸らしさがなくなったね」と言われたことは一度や二度ではない。
もちろん、まだまだ古くからの店や個性的な店も頑張っているのだが、JR三宮駅周辺の繁華街は様変わりしてしまった印象は否めない。
個人店が減り、チェーン店が増加している理由のひとつは、不動産価格の上昇だ。国道交通省が3月19日に発表した公示地価で、兵庫県内の商業地は2.4%増と4年連続で上昇した。商業地の最高価格も三宮センター街の同市中央区三宮町で前年度比24.9%増で8年連続の上昇だった。
「再開発されたビルの賃料は高くなり、個人経営にとって経営するのが難しい水準になっている。経営者も高齢化しており、閉店した後には複数店舗を持つチェーン店になっている」(三宮で飲食店を営む男性)
そうした一方で、平成30年の神戸市の観光入込客数は合計で3538万人と前年度比10.1%と大幅な減少となり、インバウンド効果がまだなかった2015年ごろと同水準となった。
そんな中で、「昔の神戸っぽい雰囲気のある店が多い」と知人たちが評価するのが、阪急神戸線の芦屋駅から岡本駅周辺だ。特に、岡本駅周辺は、古くからの店に加えて、新しくオープンした店も含め、隠れたおしゃれなエリアになっている。