2019年12月1日から、全国約2300店舗のドコモショップにおけるサービス内容が変更される。これまでは量販店やネットで購入しても、ドコモ端末であればデータのコピーやアカウントの設定などのサービスを無償で提供してきたが、今後は店頭で端末を購入した場合を除いて有料メニューとなった。スマホに不慣れな高齢者排除というそしりも聞こえるが、サービス向上のためには必要な判断だとの声も大きい。ライターの森鷹久氏が、無償の過剰サービスは誰も幸せにしない現状と、スマホ販売との矛盾についてレポートする。
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「平日の夕方まで、順番待ちの高齢者でいっぱい…。中にはほとんど用事もないのに毎日のように来店しては、無料の水を飲みながら、他の来店客(こちらも常連客)と延々と喋る人も。有料化は冷たいとか、高齢者排除と言われていますが、現場から言わせてもらうと”英断”です」(九州地方の携帯ショップ従業員・Aさん)
NTTドコモが12月から、店舗での初期サポート業務を有料化すると発表した。報道発表資料を読むと、直営店舗で端末を購入した以外のユーザーへのサポートは有料にする、ということらしいが、それ以上に気なるのは「サポート」の範囲がはっきり明文化されているところである。前述の従業員・Aさんが続ける。
「スマホを持ってきて、電話のかけ方すらわからないと言ってくる高齢者もいます。離れたところに住む子供に言われてLINEを導入したが使い方がわからない、メールアドレスに小文字のアルファベットを入れるにはどうしたらよいのか、通販サイトで商品を買いたいがやり方が難しい…など。もはや私たちが提供すべき”サポート”の範疇を超えている。明文化されたことで”決まりだから”と断りを入れることができます」
この従業員の店舗には、平日で100名近くの来店者があるが、そのほとんどが高齢者。そしてそのほとんどが、本来販売店が行うべきサポート業務とはかけ離れた「相談」だ。中には、充電器のコネクト口を逆さに無理やり突っ込んで、壊れたなどと怒鳴り込んでくる高齢客もいるといい、その労苦は計り知れない。東北地方の携帯販売店店員・Bさんも、ドコモの姿勢を肯定的にみている。
「病気でもないのに老人が病院に溜まっている、あれと同じです。来店されると私たちはどうしましたか? と受け入れざるを得ず、断れない。サポートの範囲が限定されたことで、範囲外のサポートに関してはキャリアやショップが開催する教室などで有料で学んでくださいと、案内することができる」(店員・Bさん)
とにかく店舗へいけば、なんとかしてもらえる。そんな場所だと思われているからか、ドコモショップをはじめとした携帯ショップは、いつも混雑している。週末など、店頭へ行って待つための番号札をもらうと、待ち時間は5時間ほどだと伝えられることも珍しくない。店頭対応が滞るこの状態を解消できるなら、それは店舗側だけでなく、客にとっても利便性が向上する歓迎すべき変更、とも言える。