田代まさし容疑者が覚せい剤で5度目(薬物では4度目)の逮捕と報じられた。かつてテレビっ子だったイラストレーターでコラムニストのヨシムラヒロム氏が、こよなく愛するテレビ番組のひとつが『志村けんのバカ殿様』(フジテレビ)で、1986年から2001年まで側用人として出演していた田代まさしと志村の掛け合いは絶品だったという。近年は、どんな罪状や内容でも芸能人が逮捕されるなどの不祥事を起こすと、条件反射のように出演していた作品が片端から鑑賞できなくなる。その対応は適切だといえるのか、ヨシムラ氏が考えた。
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「あ~あ、せっかくここまでがんばってきたのに……」6日に逮捕された田代まさしのニュースを観た時に漏れた感想である。5度目の逮捕、残念でならない。今回の容疑について本人は否定しているが、薬物に近いところにまだいたのかと、悪い連想ばかりが浮かぶ。
近年、田代の調子が上向きつつあったので尚更歯がゆい。2度目の出所以降、田代は「今、目の前に覚せい剤を出されたらやっちゃう。前は『やめた!』と言ってたけど、あれは嘘です。覚せい剤はやめられないから怖いんです」と話していた。
今年の田代は覚せい剤に対して、いい意味で諦めの境地に入っていた。7月にはEテレ『バリバラ~障害者情報バラエティー~』にも出演し、笑いを混ぜつつ覚せい剤について語る講義も行った。人気歌手、タレント、ニュースキャスターに成り上がったのに没落してしまった「芸能界イチのしくじり先生」といったキャラクターも確立され、露出も増えてきたのに……。
田代の微々たる復活は、個人的に『志村けんのバカ殿様』再放送の兆しと受け取っていた。覚せい剤で逮捕され、2001年に番組降板が完全に決まったあと、『バカ殿様』の放送に田代は再放送も含めて一度も姿を見せていない。何度も逮捕されている人間ではある。しかし、自らの落日を例とし、覚せい剤の恐ろしさを啓蒙する田代に少しの救いがあってもいいと思っていた。その一つとして、過去の傑作が再評価されてもいいのではないか、と。
確かに逮捕はされたが、彼の罪状は、過去の仕事が全て無かったことにされるほどのものなのだろうか。このような意見を嫌う人がいるのは理解できる。禁止薬物の使用と所持は確かに犯罪だが、直接的に誰かを傷つけたわけではない。家族や、仕事で関わりがあった人たちには迷惑をかけただろうが、築き上げたものを全否定されるほどの犯罪なのだろうか? 田代の金が闇社会に入ったことによってトラブルが生まれた可能性は否めないが、それは間接的な問題である。
それこそ『バカ殿様』は「誰かを傷つける」といったことの真逆にある作品である。豪華なセットで、志村が扮するバカ殿に田代を含めた側用人集団があたふたさせられる内容。バカバカしくて愉快なコント、準主役の田代は『バカ殿』においては側用人という役柄として画面に存在していた。自らのパーソナリティーを露出したわけではない。喜劇人として全うし、覚せい剤といったダーティーなブツと関連している様子はもちろん観られない。