本誌・週刊ポスト前号の特集『名医が教える要らない健康診断』では、毎年の検査を受けているだけでは、命にかかわる重大疾患を見落としてしまうリスクがあることを特集した。
「それ以外にも、健康診断には重大な落とし穴があります」──そう話すのは、医療経済ジャーナリストの室井一辰氏だ。
「脳梗塞や心筋梗塞など、命にかかわる重大疾患の“予兆”が全身のどこに出るかは個人差がある。そのため、異変が起きたら一刻も早く医療機関を受診するべきです。
しかし、健康診断は基本的に年に一度である上に、味覚や嗅覚などの異変について調べる項目がない。視覚や聴覚については検査項目に組み込まれていますが、健康診断の検査では不十分なケースがあります」(室井氏)
重大疾患を早期に発見・治療し、命を守るためには、自分自身が「五感の異変」にいち早く気付くことが大切だ。五感とは味覚、視覚、触覚、聴覚、嗅覚のこと。
「『問診』が全身の異変を調べる役割のはずなのですが、五感の変化は老化によっても生じるため、重大疾患によるものと区別が付きにくいケースがある。そのため、本当なら一刻も早く治療を受けるべき状態にもかかわらず、『大丈夫です』と伝えてしまい、手遅れになってしまうケースが多い。患者は、五感のどんな変化が“重大疾患のサイン”なのかを把握しておく必要があります」(同前)
健康診断では各項目が「数値」で示される。それはわかりやすい一方で、そこに表われない日常のなかでの違和感や予兆が放置されてしまう可能性もある。
※週刊ポスト2019年11月22日号