「アレだよ、アレ」──何気なく使っているフレーズがあなたの脳の衰えを加速させているリスクがある。特効薬のない「新たな国民病」である認知症だが、毎年の健康診断だけでは対応が遅れるリスクがある。そこで注目したいのが、日々の「口癖」だ。
認知症の専門医である神奈川歯科大学附属病院高齢者内科の眞鍋雄太医師は、70代で最初に受診した男性患者の例を挙げて解説する。
「『もう歳だから』が口癖で、趣味や日課への関心を失っていく初期段階の認知症症状が見られました。長年続けていた将棋クラブ通いも、うっかり反則の手を打って相手を怒らせてしまったことで、『もう歳だから』と、やめてしまった。
このままではどんどん症状が進行してしまうリスクがあると考え、“年齢は趣味をやめる理由にはならない”と説得したところ、『歳だけど頑張ってみようか』となり、クラブ通いを再開してくれました。これをきっかけに日常生活にも意欲が見受けられるようになり、80歳を超えた現在でも、症状は悪化していません」
年齢を言い訳にしながら、「どうせ無理」「なんでもいい」「好きにしなよ」などの“無関心ワード”が口癖になっている人の脳内では、こんなことが起きていると考えられる。
「無関心の言葉を繰り返し使うことで脳の神経細胞活動が低下し、物事に対する意欲がなくなってしまう。記憶力に関係するアセチルコリン系細胞の機能も落ちるため、脳の処理速度が下がり、思考も前に進まなくなってしまう。そこで、そうした口癖を減らし、たとえば“まだ若い者には負けない”と意識して口にしていけば、それに伴って行動も積極的になり、認知症を遠ざけられる可能性がある」(眞鍋医師)