高齢、特に認知症があると喜怒哀楽が激しくなり、急に泣き出したり、時には怒り出したりすることもある。でも老親に泣かれるのは、やはり動揺するものだ。そんな時、どう対処したらよいか。利用者からの信頼も厚いベテラン介護士、小谷庸夫さんに聞いた。
「認知症の人は平然としているように見えても、常に不安を感じているよう。その思いが募ったり、心細かったりして泣くことが多いようです。
気持ちをうまく伝えられずにいら立ち、自分でもわけがわからないまま泣いてしまう。子供がそうするように、不安や悲しみを振り払うために泣き叫んでみていることも。
いずれにしても人としてごく自然な反応。いわばSOSなのです。痛みや不調の訴えではなさそうなら、“どうしたの?”“何がつらいの?”と、理由を急かしたり、泣くのを止めたりするのは禁物です。
不安で悲しい時、いちばんの救いは“わかってくれる”ことではないでしょうか。自分でもどうしようもなく泣いてしまっている状況を、“泣いていいよ”“泣きやむまで待っているよ”と、受け入れてくれることがどんなに安心か。これは年齢や認知症の有無にかかわらず、わかると思います。声を掛けるより、静かに寄り添って落ち着くのを待ってください。
若い世代は社会の規範などにとらわれていて、“大人がここで泣いちゃだめ”“こんなことで泣くのはおかしい”と、つい思ってしまいます。
普通なら泣かないことも、高齢になると泣けてくることを心に留めて、ちょっと視点を変えてみてください」
【Profile】小谷庸夫さん/介護福祉士・調理師。デイサービス勤務を経て、ケアワーカー、調理師、登録ヘルパーとして勤務。現在はヘルパーステーション和翔苑・所長。介護食の講師、墨田区訪問介護事業所連絡会代表を務め、「地域の社会資源を作り上げる会」も主宰。
※女性セブン2019年11月21日号