一般的な健康診断では視力と眼底、眼圧を調べる。だが視力に異常がなくとも、「見え方」がおかしい場合には、危険な病気の兆候かもしれない。都内在住の64歳男性がこう振り返る。
「視力は裸眼で0.8ほどあり生活に支障はないのですが、ある時、長時間スマホの画面を眺めていると、視野の左側が見えにくいことに気付きました。その後も何度か同じような症状が出たが、いつも30分くらいで収まるので“老眼と疲れ目が重なったんだろう”と気にせず、市販の目薬をさしていた。すると、2か月ほど経ったある日、急に激しい頭痛がして歩けなくなり、緊急搬送された病院で『脳梗塞です』と診断されました」
幸いにして一命は取り留めたが、目の異変を放っておくと命にかかわることもあるのだ。二本松眼科病院の眼科専門医・平松類氏が指摘する。
「脳梗塞の場合、手足の片麻痺が生じると思われがちですが、実際には両目の同じ側の視野が欠けるなど、目の症状しか現われないケースがある。単なる視力の衰えや目の疲れと誤認してしまいやすいので注意してほしい」
“光るものを見ると、目の奥がズキズキする感じがして痛い”という症状にも気をつけたい。
「さまざまな目の炎症が原因のひとつとして考えられます。たとえば、眼球内に炎症を伴う肉芽腫が生じると、眼球内で光が散乱し、『目がかすむ』『目の前を蚊が飛んでいるようにチカチカする』といった症状を引き起こします」(平松医師)
この症状を放置すると、より重篤な疾患を招きかねない。
「肉芽腫は肺や心臓などの体の各所に生じる。末期まで自覚症状がない場合も多く、気づかないうちに肺機能が落ちて咳や息切れが続く肺線維症になったり、不整脈を起こすリスクがある。全身に症状が生じる前に、目に異常が現われた時点で医療機関を受診してほしい」(同前)