うつ病を含む感情障害の患者は全国に約127.6万人いる(厚生労働省『患者調査』2017年より)。特に40~50代男性の発症が増えており、「夫がうつ病になり失業…」という事態は他人事ではない。もしそうなったらどうすべきか──専門家に聞いた。
◆3度の食事を規則正しく
うつ病になる中年男性は、「周りが働いているのに自分だけ休んでいる」という罪悪感から、昼間は隠れるように寝て、夜、周りが寝静まってから起きてくる昼夜逆転生活になるケースが多い。これが病状を悪化させると、うつ病専門医の廣瀬クリニック院長・廣瀬久益(ひさよし)さんは言う(「」内、以下同)。
「うつ病の治療には、早寝早起きをして生活のリズムを整え、3食を規則正しく摂ることが何よりも大切。というのも、朝起きて日の光を浴びないと、うつ病改善に効果があるとされる脳内伝達物質セロトニンが発生しにくくなるからです。また、朝起きられないと、社会復帰するにも時間がかかってしまいます」
この生活習慣を守ることがとても難しく、家族の協力が不可欠となる。
また、食事では特に、たんぱく質と鉄分の多い食材がおすすめ。鉄欠乏症がうつ病の原因になっていることはすでに証明されているので、赤身肉などの食材を意識的に摂り、サプリメントで補おう。
一方で、避けたいのは菓子パンやスナック菓子類。
「これらを食べると血糖値が急に上がるので、気分の浮き沈みが激しくなります」
◆家事をなるべくやらせる
「体を動かすことはうつ病の治療に有効です。しかも、人の役に立つという実感があると、働いていないことへの不安感を払拭できるので、本人が嫌いじゃない家事からお願いしてみてください」
おすすめは、窓ふき。日の光を浴びながらやると、うつ病の改善に効果的な脳内伝達物質セロトニンの分泌が期待できるからだ。
「家事を一日のルーティンワークに組み込み、できたら一緒に喜んでください。それが自信につながります」
ただし、料理は避けた方がよい人もいる。抗うつ剤を服用していると、味覚に変化を感じる人もいるからだ。
◆運動をさせる
うつ病になる男性は、真面目な仕事人間が多い。休職していても会社のメールなどをチェックしてしまい、それがまたストレスになる。
「きちんと休ませることが大切なので、仕事から引き離しましょう」
廣瀬さんの患者の妻の中には、夫からスマホとパソコンを取り上げた人もいたという。空いた時間は、自分と向き合う作業をすべき。体調や幸せを感じた出来事、自分はどういう人間なのかをメモする。これがうつ病を克服した後の人生設計図になる。
イラスト/たばやん
※女性セブン2019年11月28日号