今年も年末ジャンボ宝くじの発売時期がやってきた(11月20日~)。過去、幸運にも高額当せんをした人は、再び“一攫千金”を狙って多額の宝くじを購入する傾向があるというが、そこには行動経済学でも裏付けられる落とし穴があった。ニッセイ基礎研究所主席研究員の篠原拓也氏が、具体例をもとに紹介する。
* * *
人の行動には、その人の性格が反映されやすいものだ。特に、お金の使い方には個性がハッキリと表れる。たとえば、好きなものには積極的にお金を使う「消費家」もいれば、欲しいものがあってもガマンして、堅実にお金を貯める「倹約家」もいる。もちろん、適度に使い、適度に貯める人もいるが、どのタイプであるにせよ、お金の使い方には、その人の性格・個性が如実に映し出される。
では、「お金の使い方」と「お金をどう稼いだか」の関係はどうか。どう稼いだかによって、使い方は変わるだろうか。そして、そこにも、やはり性格・個性が如実に反映するだろうか。
こんなことを考えてみる。いま手元に100万円があったとする。この100万円を稼いだ方法として、つぎの2つを考えてみる。
・1年間、毎晩遅くまで残業をして、少しずつ稼いだ100万円
・幸運にも、たまたま買った宝くじで当たった100万円
一方、このお金の使い道として、つぎの3通りの方法が考えられるものとしよう。
(1)海外旅行に出かけて、飲食や買い物などに豪快にお金を使う
(2)古くなった自宅の補修など、生活上必要な経費に回す
(3)将来の蓄えとして、銀行の口座に預金する
稼いだ方法の違いによって、(1)~(3)のお金の使い道に差が生じるだろうか。ここで注意すべきことは、どう稼ごうと、いま手元にあるお金は同じ100万円だということだ。すなわち、お金に色はない。そのことは、誰でも頭ではわかっている。
しかし、実際に1年間苦労して稼いだ100万円を目の前にすると、不思議なことに見方が変わってくる。(2)や(3)のように将来のための預貯金や、何か後に残るものを買うといった使い方がふさわしい感じがしてくるのだ。
一方、宝くじのように幸運でつかんだ100万円の場合は、(1)のようにあまりケチケチせずに、豪快にパッと使い切ってしまうのがよい、と考えてしまいがちだ。