5階級制覇のレジェンドであるノニト・ドネア(フィリピン)を下し、WBSS(ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ)バンタム級の初代覇者となった井上尚弥。
米ボクシング誌「ザ・リング」のダグ・フィッシャー編集長が「年間最優秀試合を確信した」と語った激闘は、世界中から賞賛され、試合後には米大手プロモーター「トップランク社」が、井上と複数年契約を結んだことも発表された。ボクシングライターの原功氏がいう。
「モハメド・アリやマニー・パッキャオ、フロイド・メイウェザーなど錚々たる世界王者をプロモートしてきた名門です。本格的な米国デビュー前の契約は、パッキャオでもなかったこと。“モンスター井上の商品価値は高い”と期待されている証です。対戦相手は未定だが、すでに来年は米国で2試合、日本で1試合を行なうことが内定している」
井上本人は、次の相手としてWBCバンタム級王座統一戦で弟・拓真を破ったノルディーヌ・ウバーリ(フランス)の名を挙げたが、それ以外のマッチメイクの可能性も高い。
「井上とのファイトマネーは、通常の世界戦の2~3倍になるでしょう。そのため多くのボクサーが対戦を熱望している。
目の肥えたファンが期待しているのが、WBOバンタム級王者で、世界戦で11秒KOという史上最短記録をもつゾラニ・テテ(南アフリカ)との一戦。身長175センチの長身サウスポーで、対戦経験のない井上には難敵でしょう。
もうひとりの有力候補は五輪で2回金メダルを獲り、ドネアにも勝ったギジェルモ・リゴンドー(キューバ)です。スーパーバンタム級ながら“みんな私と井上の試合を見たがっている”と語っており、階級を下げてくる可能性はある」(同前)
世界の強豪をなぎ倒し、史上最強王者となるか──。井上の拳には、これまでの日本人ボクサーとはレベルの違う「夢」が宿っている。
※週刊ポスト2019年11月29日号