老いも若きも年金に対する不安を抱えるなか、そういった心配とはある意味、完全に無縁なのがヤクザだ。年金も保険も入れるはずのないヤクザは、どうやって老後、生きていくのか? 共著『教養としてのヤクザ』(小学館新書)が話題を呼ぶ溝口敦氏と鈴木智彦氏の2人が語り合った。
溝口:組長の周りで執事のような役割をする高齢ヤクザもいます。四代目山口組組長・竹中正久の弟、竹中武(二代目竹中組組長)にはお付きの中に爺さんがいました。
その爺さんが死んだとき、竹中武は私に電話してきて、「花を出してやってくれんか」と頼んできた。「我々の商売、花は出せないんです」と断わったら、あっさり引き下がってくれましたが、それだけその爺さんを大事にしていたということ。通帳から何から大事なことは一切任せてましたからね。
鈴木:そういう人はいいですが、ヤクザは年金ももらえないから、年を取ると生活が厳しいんです。保険料を納めればヤクザでも公的年金をもらえるはずですが、そんな人は見たことがない。
溝口:継続的な払い込みなんかできないですからね。健康保険がない人だって多い。医者にかかるときは全額自己負担か、あるいは知人の保険証を借りてなりすまして受けるか。
鈴木:私もよく「保険証貸してくれ」って言われました。今はさすがに健康保険は入っているヤクザが多いと思いますが。ちなみに、昔は生命保険に入っていた組員もいて、抗争で殺されて実際に保険金が下りたことがあったそうです。