高齢化が進む日本だが、それはヤクザも同じ。山口組分裂抗争に関連して世間を騒がせた2つの出来事──対立する神戸山口組組員2人を六代目山口組組員が射殺した事件、その六代目山口組のナンバー2にして“抗争最大のキーマン”とされる高山清司若頭の出所、奇しくもその2人が、68歳と72歳という高齢者であった。
ヤクザに“穏やかな老後”はあり得ないのか。共著『教養としてのヤクザ』(小学館新書)が話題を呼ぶ溝口敦氏と鈴木智彦氏の2人が語り合った。
鈴木:組長クラスになると、途端にスケールが変わります。映画『仁義なき戦い』のモデルになった美能幸三(広島県呉市の美能組初代組長)は、「引退するときにコレだけあったら足りる」と5本指を立てたそうです。5000万円かと思ったら、5億円だと。『週刊サンケイ』の原作連載担当者から聞きました。
溝口:今でも組長クラスなら億単位は貯めておかないと老後が不安、という気持ちでしょう。
鈴木:年金はないし、月100万円くらい使う暮らしは維持したい。しかも銀行に預けられないから、みんなキャッシュですもんね。
溝口:だから年を取ったヤクザの家にはよく泥棒が入る。北星会会長だった岡村吾一が92歳で死ぬ前年、自宅から現金2億円が盗まれたという事件が起きました。1トンもある金庫が丸ごと持ち出された。
鈴木:金庫を盗まれるのってヤクザ社会では珍しい話じゃないんです。そういうことが怖いから、年を取ってもカタギには戻れない。