お金のためであれば手段を選ばない人たちは少なからずいる。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
* * *
不動産をめぐるトラブルは、中国社会では日常茶飯事。新聞の社会面を賑わす常連である。少し前まで、中古不動産の購入制限をかいくぐるために偽装離婚する夫婦が後を絶たなかった。さて、今回の事件は立ち退きにともなう家屋の解体補助金についてだ。
場所は中国の浙江省。事件を引き起こしたのは、同省麗水市の農村の住民の石という人物とその親戚など11人である。
いったい何をやったのか。簡単にいえば補助金の詐取である。9月24日付『吉林日報』が伝えている。
補助金制度の細かい中身は明らかではないが、家族でもらうよりも個別でもらう方が得であったり、といった違いがあったのだろう。石の夫婦をはじめ同じ建物に住むいくつかの家族全11人が、わずか半年の間に計23回も結婚と離婚を繰り返したというのだ。
これだけ派手にやれば当たり前だが、警察の目に留まり、まずは結婚法違反から司直のメスが入ったという。いずれ補助金詐欺にも及ぶと予測されているが、それにしてもこれだけ努力するエネルギーには唖然とさせられる。