日韓両国の安全保障に、多大な影響をもたらすGSOMIA(軍事情報包括保護協定)の失効をめぐって、文在寅政権は最後まで揺れ動いた。米国からも見直し要求があってなお、なかなか決断できなかったのは、韓国国内の“日本すり寄り”バッシングを極度に恐れたからだろう。韓国政府を批判したベストセラー本の著者らに対して起きている苛烈な反応を見れば、その危惧は大げさとはいえない。
〈国家反逆罪で追放しろ〉
〈日本に帰化すればいい〉
韓国で7月に発売され、10万部超という異例のベストセラーになっている『反日種族主義』の6人の共同著者が、韓国のネット上で猛批判にさらされている。
同書は歴史的資料を基に、慰安婦や徴用工の強制性を否定し、独島(竹島の韓国名)の領有権主張に疑義を示すなど、韓国政府の従来の主張を、「反日主義者の作り上げた虚構」だと断じた。
11月に日本語版(文藝春秋刊)が刊行されるや、著者たちへのバッシングはさらに過熱。韓国大手のハンギョレ新聞は〈日本人が誤った歴史観を深め、歪曲された歴史観が日本社会に拡散する〉と批判した。
著者のひとりで落星台経済研究所研究委員の李宇衍(イウヨン)氏は、実際に身の危険を感じた経験を、本誌『週刊ポスト』(8月30日号)でジャーナリスト・赤石晋一郎氏の取材にこう語っている。
「出版後、研究所に2人の男が乱入し、私にツバを吐きかけました。電話で『塩酸をばらまくぞ』と脅されたこともあります。電話やメールによる悪口や脅迫は後を絶ちません」