日本には違法薬物の取り締まりを担う捜査機関が2つある。ひとつは警察で、沢尻エリカ(33)を逮捕した「警視庁組織犯罪対策5課(以下、組対5課)」を始め各県警に担当部署がある。組対5課は約200人の捜査員を擁し、巨大な組織力で違法薬物や銃器対策の捜査にあたってきた。
もうひとつが、マトリこと「厚労省地方厚生局麻薬取締部」。東京・九段下に本部があり、その他全国8か所の地方厚生局に置かれている。マトリ捜査官は「司法警察職員」という国家公務員にあたり、捜査権・逮捕権に加えて拳銃の所持も認められている。
現在、マトリの捜査官は全国で300人ほど。関東厚生局所属はわずか数十人しかいない。警察組織に比べればはるかに規模は小さいが、マトリだけが使える“武器”がある。麻薬取締法58条で認められている『おとり捜査』だ。捜査官は売人を泳がせたり、ヤクザの組事務所に潜入することもある。
「マトリと組対は長年、“犬猿の仲”だった。いまは互いの交流もあるが、競い合う関係であることは事実です」
マトリで30年以上薬物捜査に従事してきた元麻薬取締官の小林潔氏が語るように、ライバル関係の両組織は、「大物」を挙げることでその存在感をアピールし合ってきた。組対5課は過去、酒井法子やASKA、清原和博を挙げてきたが、近年はマトリによる逮捕が続いており、今年もマトリがピエール瀧、元KAT-TUNの田口淳之介を検挙し、注目を集めた。
沢尻逮捕もそんな“捜査合戦”の中にあったと語るのは、警視庁関係者だ。