プロ野球の世界では契約更改の季節がやってきた。1年の評価が金額で示されるとあって禍根を残すこともしばしば。グラウンドの外にはドロ臭い「年俸交渉」の球史がある。(文中敬称略)
1960年代には長嶋茂雄、王貞治という国民的大スターが誕生し、1970年代まで2人が球界最高年俸の座を占めた。
野村克也は、「王と長嶋は契約更改も特別だった」と語っている。
「聞いた話だけど、2人の契約更改では、球団から金額提示しないんだって。白紙を彼らの前に置いて“好きな額を書け”って。王に聞くと、“ノムさん、あれはいい手だよ。非常識な金額書けない”って言うんだよ。人間性を試されるって(笑い)。確かにそうだ。人間には“銭ゲバと思われたくない”という理性があって、それが邪魔してね。思いきって書けないって」
この“特別待遇”は、ON以上にチームメートを悩ませたという。
「球団の提示に不満を持った選手がいても、“ONがこの額なんだから、お前はこれでももらいすぎだ”と言われたら反論できない。巨人時代の松井秀喜も一発サインで有名で、“松井さんが渋らないと俺たちは文句を言いにくい”とこぼす選手もいたようです」(スポーツ紙編集委員)