国内

ローマ教皇来日 「福島への誤解」が世界に広まるとの懸念も

ローマ教皇の世界への発信力は絶大(横田紋子)

 ローマ教皇は、世界中に10億人以上いる信者を束ねる宗教団体「ローマ・カトリック教会」の最高指導者であり、バチカン市国の国家元首でもある。カトリック教徒にとっては、全知全能の神の代理人であり、絶大なる権威と影響力をもつ。

 その教皇が38年ぶりに来日した。日本のキリスト教徒は約191万人と推定され、人口比では1.5%ほどに過ぎず、ほとんどの日本人には関係なさそうだが、そこは“おもてなし”の心で、日本中がフランシスコ教皇を歓迎するムードに包まれた。しかし、11月23日から26日までの短い滞在の間に日本各地を訪問し、新聞各紙やテレビが教皇の発したさまざまなメッセージを伝え始めると、そのムードに変化が起きた。

 フランシスコ教皇は24日、被爆地の長崎と広島を訪れ、〈核兵器は、今日の国際的また国家の、安全保障への脅威からわたしたちを守ってくれるものではない、そう心に刻んでください〉(NHK「ニュースWeb」11月24日付)と核廃絶を訴えた。

 海外の要人が被爆地を訪れ、核廃絶を訴えるのはよくあることだが、教皇の発言はそれだけに留まらなかった。25日午前には東京で東日本大震災の被災者約300人との交流会に参加し、こう述べたという。

〈地域のつながりが再び築かれ、安全で安心した生活ができるようにならなければ、福島の事故は完全には解決されません。これが意味するのは、私の“兄弟”である日本の司教たちがいみじくも指摘した、原子力の継続的な使用に対する懸念です。司教たちは原発の廃止を求めました。いまの時代には、技術的な進歩を人間の進歩として受け止める『技術主義』がはびこっています。このようなときには立ち止まり、振り返ってみることが大切です〉(「AERA.dot」11月26日付)

 原発の存廃という一国のエネルギー政策に関わる問題に踏み込んで言及している。

 さらに、この日の午後には東京ドームでの大規模ミサが開催されたが、その直前に都内の教会で難民留学生らと会い、〈特にお願いしたいのは、友情の手を広げてひどくつらい目に遭って、皆さんの国に避難して来た人々を受け入れることです〉(「テレ朝news」11月25日付)と、日本がもっと難民を受け入れるよう呼び掛けている。

 この発言が引き金になったのか、ツイッター上では、〈先ずはバチカン市国でやってみればいいのに〉〈むかし十字軍というのがあってな〉など教皇に反発する声も出た。

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