栃木県足利市に“奇跡の保育園”と呼ばれる認可保育所がある。その名も「小俣幼児生活団」。園児は、自ら考え決断できる、自立した子供に育つと評判で、入園希望者が絶えない。
3000坪以上ある敷地内には、池や丘、梅林が広がり、保育士が見守る中、ある子は裏山を走り回り、またある子は園舎で折り紙に没頭するなど、皆が思い思いに過ごしている。カリキュラムごとに園児を管理する一般的な保育園とは違う光景が、ここにはある。
「当園の方針は、『ほったらかし保育』。何時に来てもいいし何時に帰ってもいいの。来たら好きなことをして遊ばせて、お昼寝もしたくないならしなくていい。給食もお腹が空いた時に食べればいいの」
微笑みながらこう話すのは、92才ながら同園で主任保育士として働く大川繁子さんだ(「」内、以下同)。
そんな大川さんに、子育てに悩むママたちが悩みを相談した。
◆「ダメ」と命令せず 気持ちだけ伝えて
本誌・女性セブンの記者S(41才)の一人息子(5才)は、凝りもせずに失敗を飛び込んでしまうタイプ。保育園の仕度を本人に任せておくと、靴下は左右バラバラ、あるいは履かずに出かける日も。保育士に注意されても、馬の耳に念仏である。
「先生に怒られても平気なら、その子は大物よ(笑い)。自分のやりたいことをやる意志があるということでしょう」
ただし、度がすぎるようなら、叱るのではなく、「そういうことをすると、ママは悲しい」と、母親の“気持ち”を伝えるのがおすすめだという。「~したらダメ」「~をしなさい」と、一方的に否定や命令をするのではなく、あくまでも気持ちだけを伝え、子供に「ママが悲しむなら、やめよう」と考えて決めさせることが重要だという。
子供に決めさせるのは、いくつになっても同じこと。1才の長女と16才の長男を育てる成田逸美さん(35才)は、長男の進路について、ダメだとわかっていながらもつい口を出してしまうと、頭を悩ませている。
「わかるわ。私もそうだったから。でも、それで失敗したの」と、大川さんは自身の体験を振り返った。