週末の繁華街を歩くと、条例などで禁じられているはずの客引き(キャッチ)からひっきりなしに声をかけられる。キャッチは若い男性ばかりで、中には…というより、大学生風情の“子供”がほとんどだ。近年、全国で大学生が「儲かるバイト」とすすめられてキャッチに手を染めるケースが増えており、各大学でも注意喚起が行われているが、検挙されるキャッチ学生は減らない。ライターの森鷹久氏が、彼らが安易に客引きに手を染めている実態についてレポートする。
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11月6日、明治大学4年の男が、新宿歌舞伎町で違法な客引きを行なったとして逮捕された。そもそも「客引き」自体が違法行為ではあるが、自身が担当する店のライバル店に入ろうとした客に声をかけ「あっちは一杯だが、系列店のうちなら席がある」などと嘘をついて案内していたというから、偽計業務妨害の罪でお縄に…という顛末であった。
かねてより「違法キャッチ(客引き)」と「ぼったくり店」の密接な関係を取材し記事にしてきた。当然背後には「暴力団」の影がちらつくどころか、積極的に関与しており、大都市の繁華街では見過ごすことができない問題として市民たちを苦しめているわけだが、今回筆者は、元違法キャッチの男性に、その実情を聞いた。
「収入は月に40万を下回ることはなかったです。飲みサークルの先輩の紹介で始めました。あんまり収入多いから、学校行くよりもこっち(キャッチ)がメインになっちゃって」
中国地方出身で元キャッチ、当時は都内の伝統ある私立大学の学生だった辻悟史さん(仮名・20代)が”仕事”を始めたのは、大学三年生の春頃だった。テニスサークルとは名ばかりの実質”飲みサークル”に所属していた辻さんは、先輩から「儲かる仕事がある」と言われ、新宿歌舞伎町や新橋などで、多い時で週に4度も違法キャッチを繰り返していた。
「その先輩も、さらに先輩から紹介されて仕事をやってました。もうサークルの伝統というか、そんな感じ。俺が働いた分から先輩にいくらか金が行くシステムで、まあネズミ講みたいなもんです。風俗のスカウトみたいな怪しいシステムで、最初は怖かったんですけど、給与額がすごすぎてハマったんです」
違法キャッチを始めたその日、夕方から明け方まで街に立って、案内できた客は7組計22人ほどだった。これでは大した収入にはならないと思っていたが、先輩から手渡された封筒には2万円を越す紙幣が、なぜか全て千円札の束だった。
「時給でいうと二千円以上。学生にとってこんなに割りのいいバイトはないと思いましたね」
筆者の取材で、違法キャッチを利用している店のほとんどがいわゆる「ぼったくり店」だったことも判明していた。以前のような「瓶ビールとおつまみでン十万」といったわかりやすいぼったくりではなく、知らないうちにサービス料が加算されていたり、客に無断で出てくるお通しがなぜか千円を超えていたり、説明されないうちにテーブルチャージを取られていたりという今風な「プチぼったくり」店だ。