今、テレビ業界で注目されている時間帯が「金曜夜」だという。今秋、民放各局がリニューアルを進めるなどし、視聴率バトルが激化しているのだ。各局の戦略、そして死角は? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんがテレビ界の現状とともに解説する。
* * *
今秋は民放各局が金曜夜の番組をリニューアルさせたことで対決図式が鮮明になり、約2か月が過ぎたところで、ある程度の結果や評価が出はじめています。
対決図式の中心にいるのは、国民的アニメの『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』を土曜夕方に移動させて、『ザワつく!金曜日』『マツコ&有吉 かりそめ天国』という毒舌トーク番組を並べたテレビ朝日。それまで20時台の生放送だった長寿番組の『ミュージックステーション』を21時台に変えるなどの大改革でしたが、ここまでは一定以上の成功を収めています。
とりわけ『ザワつく!金曜日』は、移動初回の視聴率15.1%から12.5%、12.1%、11.7%、12.9%、10.6%と好調で、時間帯1~2位を獲得(すべてビデオリサーチ、関東地区)。さらに、大みそか夜の大型特番に選ばれるなど、一気に「テレビ朝日バラエティの顔」になりました。一方、深夜帯からの移動で「魅力が消えるのでは?」と不安視された『マツコ&有吉 かりそめ天国』は視聴率10%前後と及第点のスタートだったものの、『ミュージックステーション』の通常放送は視聴率5~6%まで落ち込んでしまいました。
そのテレビ朝日と熾烈な視聴率首位争いをしている日本テレビは、「家族で見よう金曜日」というキャッチフレーズでCMを流していたようにファミリー視聴を強化。19時台の新番組『クイズ!あなたは小学5年生より賢いの?』と20時台の『沸騰ワード10』との連続視聴を目指している様子がうかがえます。
日本テレビの鍵を握る『クイズ!あなたは小学5年生より賢いの?』は、10月18日の初回と2回の視聴率こそ9.6%でしたが、11月15日の3回は13.3%で『ザワつく!金曜日』の12.9%を上回る好スタート。19時台から20時台に移動した『沸騰ワード10』も8.8%、12.1%、13.1%と好調で、視聴率の面では、前述したテレビ朝日に加えて、『爆報!THEフライデー』『ぴったんこカン・カン』『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』で金曜夜のトップを走ってきたTBSと三つ巴の様相を呈しています。
『坂上どうぶつ王国』の次に『でんじろうのTHE実験』を移動させ、新番組『ウワサのお客さま』をスタートさせたフジテレビも含めて、なぜ民放各局は金曜夜にこれほど注力しているのでしょうか。その理由を掘り下げていくと、方向性の違いとともに、死角が見えてきたのです。
◆土日同様にファミリー層を狙う理由