2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場が、最後のチェックを終えて11月30日に完成する。
12月中旬に竣工式を行ない、12月21日にはオープニングセレモニー、元日にはサッカー天皇杯決勝が開催される予定だ。空から見下ろすと、紅葉する明治神宮外苑の杜に、眩い光を放つ白い屋根が輝いている。
「木と鉄を組み合わせたハイブリッド構造の屋根に、47都道府県から調達した木材を使った軒庇など、木を多用しているのが特徴です。従来の競技場と違ってコンクリートの外壁がないので、6万8000人を収容する巨大スタジアムなのに圧迫感が抑えられ、見た目がスッキリしています」(建築アナリスト・森山高至氏)
振り返れば、スタートから前途多難だった。当初は建築家の故ザハ・ハディド氏のデザイン案が採用されるも、2520億円に膨らんだ工事費が問題視され、2015年7月に白紙撤回となる。代わって建築家・隈研吾氏の「杜のスタジアム」案が採用され、2016年12月、当初の予定より1年以上遅れてようやく工事が始まった。
予算と工期に余裕がない状態で、最難関とされたのがフィールドに約60mせり出した屋根工事だった。競技場の整備を担うJSC新国立競技場設置本部、高橋武男氏が振り返る。
「組み立てられた屋根部材をクレーンで吊り上げ、上空でつなげていくという難しい工事でした。地上約50mでの高所作業になるので、職人さんの安全対策が第一です。工事に先立ち、実物大のモックアップを作って施工検証を実施し、安全面の検証や施工手順の確認を行ない、本番の屋根鉄骨工事は2018年2月から1年1か月かかりました」