2015年に北陸新幹線が延伸開業したことで、観光客が一気に増えた金沢(石川県)。だが、そうした観光需要の高まりを見越してホテルが次々とオープンしたために、今では客室の供給過剰に陥っているという。ホテル評論家の瀧澤信秋氏が、激戦化する“金沢ホテル戦争”の現場をレポートする。
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雅やかな古都・金沢は観光都市としてのポンテシャルも高い。2015年の北陸新幹線開業でその魅力はさらに増し、訪日外国人旅行者もこぞって押し寄せている。
金沢に宿泊する訪日外国人旅行者数をみると、2015年には25万6092人だったのが2016年には39万6173人、2017年には44万8267人と増加。2018年に至っては52万2343人と2015年から倍増の勢いだ(金沢市調べ)。
新幹線開業等によりホテルが増加するのは定石であるが、金沢も例にもれずここ数年で多くのホテルプロジェクトが進行してきた。大きく分けて駅周辺と百万石通り周辺がホテル開業エリアといえる。兼六園などの玄関口でもある駅東口は賑やかなエリアで、従前からシティホテルやビジネスホテルなど充実したホテル群が林立している。一方、新幹線開業効果を感じるのが、新しいホテルが多く登場した駅西口だ。
新規開業で圧倒的に多いのは、宿泊に特化したビジネスホテルである。客室数ベースでも圧倒的な供給量を誇るスタイルであり、スピーディーな開業も期待できるなど、まさに急増した訪日外国人旅行者が出向く観光都市に見合う業態だ。
そのような近年の金沢ホテル事情であったが、ここにきて供給過多が一気に顕在化した。稼働率が対前年割れするホテルが増え、平均客室単価も下降傾向である。実際に取材してみると、ビジネスホテルに客を奪われる形となったシティホテルの危機感は相当のようだ。
もちろん、ビジネスホテル同士の競争も激しさを増している。ホステルのような簡易宿所や民泊のインパクトもあるという。どのビジネスホテルも宿泊に特化しつつも、他ホテルとの差別化を図るべく、独自のコンセプト・サービスを打ち出して生き残りを賭ける。